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先生の手がゆっくりと俺の身体を撫で回していく。
ボタンが一つずつ外れてそれから繰り返し、しつこいくらいにキスをされる。
何もかも優しすぎるくらいに。
「肌熱いね。」
「…ん、…っ、…」
「目閉じないで。」
惑わされるように体が支配されていく。
服を奪われ先生の細い指が下へと迫ってくる。
怖くない
何も 怖くない。
「…楠本クン?」
怖くない、先生は酷いことなんてしない。
そうわかってるのに。
体のどこかが震えて少しずつ恐怖がこみ上げてくる。
また 何か傷を負うんじゃないかと。
「怖い、…っ…」
「…行為が怖い?」
「わからない…、でも…怖くて、…手が震えるくらいに怖くて…っ」
両腕で顔を隠して目を閉じる。
幻滅されただろうか。
こんなに優しくしてくれる人にまで怯えていたら俺はもう誰とも関われない気がする。
俺の我儘で付き合わせている事なのに。
「…ふぅん。」
体の上からそんな声が聞こえた。
少しだけ目を開き、腕の隙間から先生を見上げる。
鋭い目が俺を見下ろして1度赤い舌がペロリと唇を撫でる。
まるで 別人のような。
「仕方ないよ、キミは沢山怖い思いをしちゃったからね。身体が怯えちゃったんじゃないかな。ボクはいいけどキミの身体は??熱は?」
「……寝たら、治る…」
「そう。治らなかったら言ってね。ご飯の続きは明日の朝にしよっか。このままここで眠っていいよ。」
すぐにケロッとして笑顔で先生はそう言った。
俺の上から退くと、ゆっくりとまた優しく服を着せてくれる。
俺はまだ両腕を顔の上に乗せたまま動けない。
先生のその仕草の中のなにかに恐怖を感じた。
そこに嘘があるような気がして。
「ボクは片付けと寝る準備をしてくるから、その後は一緒に寝させてね。」
「…ん。」
「あと他に不安なことは無い?」
その問いかけに少しだけ腕をどかしてじっと先生を見る。
何も変わりのないいつもの明るい先生だ。
何が怖い?何も怖くない。
「…あの、……ごめん。色々、と。」
「いいよいいよ!無理して眠らなくてもいいけど…とりあえず、おやすみ。」
怖くて一度謝ると大げさに笑っては俺の頭を撫で部屋を出ていく。
俺は明るいままの部屋の中布団を頭まで被って熱い息を吐いた。
体の中の熱は少しも消えたりしていない。
何かがおかしいんだ。
それが何かわからない。
この少し感じる恐怖と、違和感を飲み込むように目を閉じ無理やり夢の中へと逃げ込んだ。
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