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静かな保健室にそんな声が響いた。 ジン、とした反響が止むより先に楠本は必死の形相で俺を睨みつける。 「Ωになんてなりたくなかった、Ωになんて…っ、好きでなったんじゃない…!!俺は、っ…俺、……っ、ぅ"……」 「おい、楠本……、…」 「ぉ"、ぇえ"…、っ…ぐ、っ…」 勢いよう叫んだ後、苦しそうに両手で口を教えると嗚咽と一緒に口から嘔吐物が飛び出す。 指の隙間からボトボトと落ちるソレはよく知った色ではなくてところどころ白い粘着質な液体が混ざっている。 いや、それが主と言っても間違いではない。 前屈みになり嘔吐を繰り返しながら、それでも楠本は声を上げた。 「ん"、っ……おめ、がに…な、んて……っ…」 「…言い、今は話すな。」 「別に、っ…生きたいなんて、誰にも…ぉ"、え…ぇっ、…誰にも、頼んで…な、ぃ"……!!」 「楠本、…」 「こん、な……のに、なるっなら、……ぅ"、っぐ…死に、たかった……っ」 顔を汚して、ぐしゃぐしゃになって。 それでもまだ訴え続けていた。 Ωになんてなりたくなかった 生きたいなんて頼んでない 死にたかった そんな言葉を繰り返して。 汚れた指の隙間から見える顔はもうグチャグチャなのに、涙だけは流れていなかった。 「わかった。だから、今は黙れ。」 「俺、っは……!」 「…もうそんなに悲しいことは言うな。」 ずっと、ずっと泣いてたんだな。 涙も流せないままでずっと。 「……また、…お前に、迷惑かけるのが…嫌、だ…」 「かかってないだろ、別に。」 「汚して…、汚ぃ、…っ…し、…」 「今は気にするな。」 汚れた楠本の体を抱きしめる。 ハグにありがちな甘い匂いも、優しい声も、照れたような赤い顔もここにはない。 ただ崩れた顔の1人が腕の中にいるだけだ。 たまにはそんなのもいいだろう。 「ぇ、………」 「優しくしてやる。」 抱きしめて、腕の中の体を優しく撫でてやる。 最初は暫く固まったままだったが直に体重がゆっくりと俺の方へかかり首元に顔が埋まると小さな声が聞こえてきた。 「…助けて、って…言ったのに。」 「次はちゃんと聞こえる距離にいてくれ。」 ただのΩとただのαの なんの意味もない そんな時間が流れていた。

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