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「………気持ち悪い、…」
「だろうな。」
思ったままに呟くと、皆木が少しだけ口角をあげてニヤリと笑った。
…なんだか嫌な気分だ。
感情のままに叫んだ上にここまで汚い姿を見せ、更に腕に抱かれて慰められるなんてどれだけの失態なんだ。
口の周りや手にこびり付いた嘔吐物から目をそらすように横を向くと、皆木の着る白衣にまでついたそれに思わずまた吐き出しそうになってしまう。
「先に洗い流すか。」
「…どこで。」
「保険室にシャワーくらいついてる。お前何回も……あ。」
「意識がない時に入ったんだな。」
「ま、そういう事だ。立てるか?」
「流石にそこまでエスコートされたら死にたくなる。」
それもそうか、なんて言って笑うと白衣を揺らしながら前を歩いて行ってしまう。
慌てて横を向いてベッドから足を下ろすと、ゆっくりと床に立ち上がる。
なんとか歩くことくらいは出来そうだ。
と、前へ足を勧めた瞬間、ビリビリと激痛が走る。
「ひ、っ……!」
「おい、どうした。」
「……なんでも、ない。」
「どう考えても何でもない声じゃないだろ。傷が痛むか?」
「痛くない。」
「それは嘘だろ。…今更なんの意地だ、さっさと言え。」
「…馬鹿にしそう。」
「する訳ないだろ、俺は餓鬼じゃない。」
我ながら幼稚なことを言うな、と思いながらもなかなか口を割る気にならない。
正直、皆木は馬鹿にしたりしないだろうがそれが逆になんとなく嫌だ。
悩んでいると「早く言え」なんて少し怖い顔で俺を見下ろしてくるから渋々口を割ることしか選択肢が無くなってしまう。
「…痛い。」
「どこがだ?」
「っ、後ろの……中、多分だけど…切れて…る。」
「あぁやっぱりか。風呂終わったら薬塗ってやる。自分でシャワールームまで歩けるか?」
「ゆっくりなら。」
「…鬱陶しいな。」
心底面倒そうにそう言うと白衣の袖をまくっては俺の腰へ手を回す。
ちょっと待て、と言うよりも先に俺の体を軽々と抱き上げるとそのまま運ばれてしまう。
不本意だ。
こんなの嫌なのに。
「やめろ、下ろせ…!」
「自力で歩くの待ってたら日が暮れるだろ。さっさと洗ってさっさと寝て、さっさと次の事考えろ。」
「──っ、わかった…今日だけは大人しくしとく。」
「それで宜しい。」
抱かれながら、そっと皆木の顔を見上げてみる。
いつもと同じなのにどこか少しだけ優しい顔をしているような気がした。
なんだか、楽しそうな……そんな、気がした。
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