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皆木に抱かれたまま連れていかれた先は小さな準備室のような場所で、奥にシャワーが見えるがそれ以外は洗濯物が干してあったり段ボールがあったりと普段はあまり使われていない場所らしい。
「下ろすぞ。」
「ん。」
「服脱いでそこのカゴに入れろ。」
「わかった。」
床に足をつけ一人で立つと、ゆっくりと服を脱ぎ始める。
俺は一体何着のパジャマをダメにするんだろう。
なんて一度ため息をついて上を脱ぎ捨てズボンに手をかけたところで、ふと視線に気づく。
恐る恐る振り向くと壁にもたれた皆木が「早くしろ」と言いたげな顔でじっと俺を見ていた。
「…そこにずっといるのか?」
「あ?……あー、あぁ」
「なんだよ、その適当な返事。」
「いや。意識ある状態でいるの初めてだろ。何も考えてなかった。そうか、ほっといても勝手に風呂入るのか。」
「そりゃそうだろ…」
言わなきゃこのまま風呂まで世話になるところだったのか、と思うとゾッとする。
…いやでも。
今までずっと意識のない俺の世話をして風呂に入れて、着替えまでさせてくれてたってことを忘れていた。
綺麗なものではないはずなのに。
「俺、向こうにいるからな。シャワー出たらそこのパジャマに着替えて呼びに来い。薬はその後だ。」
「ん。」
「なんかあったら呼べ。」
「……あのさ。」
ありがとう
それくらい、言っておくべきだ。
ぎゅっと手を握りこんで、なかなか開かない口をこじ開ける。
なんだ、と目を細める皆木へ1言
「…ありがと。」
「何がだ?」
「え、…いや…色々、いつも後処理…とか。」
「別にいい。嫌々してる訳じゃない。」
「……嫌じゃない分けないだろ。」
わかり易過ぎる嘘だ。
そんな訳ない、と否定すると何故か楽しそうに笑って少し優しい顔をするから俺は呆然としてしまう。
「やるのは保険医で担任だからだ。…でも、お前だから嫌じゃない。」
「は……?」
「基本的に他人は好きではないがお前は別に嫌いじゃない。だが気分は良くない。あまり心配はさせるな。…ほら、さっさと体洗ってこい。」
「な、…どういう意味で…!」
俺の問いかけに答えずにそそくさと部屋を出て行ってしまう。
嫌じゃない…? 嫌いじゃない…?
俺は皆木に対してまったくいい態度をしてこなかったのに。
…なんで。
「……仮にも、運命の番だから…?」
頭の中がグルグル回ってくる。
考えたって埒が明かない。
服を勢いよく脱いで小さなシャワールームへ体を押し込む。
まだ俺には好きも嫌いもわからない。
この気持ちが何かも、これが恋なのかも。
「あぁ、くそ……つい余計な事言っちまった。…表情崩れて無かっただろうな。」
皆木が俺と同じくらい、それを分かってないって事も。
まだ 知らない事。
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