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人間らしく

「ん、………」 寝返りをした拍子に、パチンと目が覚める。 まだどこか寝ぼけながらも布団を手繰り寄せゆっくりと目を開ける。 眩しくて、それからぼやけてよく見えない。 白くてもやもやした視界の中で皆木を探すけれど白衣姿は見当たらない。 「………あれ、…」 ようやく意識がしっかりとしてきてベッドからのそのそと体を起こす。 窓の外へ目を向けるともう空は赤くて夕焼けが広がっている。 ベッドの上へ座りながらも布団を肩までかけ、ぐるぐると周りを見渡す。 やはり、どこにも皆木の姿が見えない。 ドクドクと心臓が鳴り、段々と不安になってくる。 また誰か知らない人が来るんじゃないか。 もう、返ってこないんじゃないか。 そんな不安から布団を肩に掛けたままベッドから降り、ゆっくりと保健室を歩き始める。 「皆木。……いないのか?」 返答はない。 シンとした部屋に、布団の擦れる音とペタペタと裸足の足が床を歩く音だけが聞こえる。 時々、布団の端が棚や椅子に当たって変な音を立てる。 その度にビクビクと揺れる体が嫌で強く布団を握りしめ、血が出るほど唇を噛み締めていた。 保健室のどこにも皆木の姿はない。 もしかしたら隣の部屋にいるのかもしれない。 そう思い、また布団を引きずって歩いていく。 ゆっくりと扉を開け中を覗き込むけれど誰もいないどころか、人気すら感じない。 どうしたらいいのか分からず、恐怖に襲われる。 また、一人で何日も? その時。 廊下から足音が聞こえてきてガチャガチャと扉を開こうとする音が聞こえてくる。 「ひ、っ…ぇ、…あ……誰、っ…!?」 思わずそんな悲鳴みたいな声を上げしゃがみ込んだせいで布団に引っかかって簡易ラックが派手な音を立てて倒れる。 錠剤の薬や何かの液体が床へ散らばりじわじわとこっちに向かってくる。 外から聞こえてくる音が止み、その代わりにガチャンと音を立てて鍵が開いた。 心臓の音がうるさすぎてもう何も聞こえない。 ガクガクと震える体を抱きしめることさえ出来ず、ただ崩れ落ちたまま床を見つめていた。 もう、嫌だ。 「……楠本、どうした!?…おい、しっかりしろ!」 すぐ近くでバサバサと何かが落ちる音がしたかと思うと、そんな声が聞こえた。 大きな手が俺の両肩を掴み、それから知っている顔が俺を覗き込んだ。 「何かあったか、おい……!」 「……怖、かっ…た、…」 何も言葉が浮かばず、ただ頭にあったその言葉を言うと皆木は強ばった顔を少しずつ緩めては肩から手を離した。 それからハァ、と一度ため息をつき 「心配させるな、馬鹿が。……あぁ、いや。不安にさせて悪かった。」 と言うと俺の頭を一度撫でては布団ごと大きく抱きしめてくれる。 そして耳元で「もう大丈夫だ」と言っては、それから俺が何か言うまで離さなかった。

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