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駐車場へ車を止め、周りに誰もいないことを確認する。 荷物を持ち後ろを振り向くと楠本はぼーっとどこかを見たまま車が止まっている事にさえ気付いてないようだった。 「楠本、着いたぞ。」 「………え。…ん。」 パチ、とまるで眠りから覚めたみたいな顔をすると頷いてすぐに車を降りる。 …本人でも気付けないレベルで壊れてるんだろう。 俺も続いて車を降りるとそのまま黙って後ろをついて歩いてくる。 「疲れてるか?」 「少しは。」 「飯食ったらさっさと寝るか。明日の学校は休めばいい。」 「…これ以上の欠席はまずい。」 「体調管理も学業のうちだ。」 「っ、…俺はこれ以上バカには…!」 「……楠本。」 声を張り上げる楠本の口へ手を当てる。 どんな事がスイッチになるのか、俺もコイツもまだ理解出来ていない。 「興奮するな。話は最後まで聞け。」 「…なんだよ。」 「家に入ってからな。」 そう答えると不服そうにそっぽを向いてしまう。 今の楠本からしたら、今まで全てを捧げてきた勉強が疎かになっている事が恐怖なんだろう。 実際、授業は間違いなく遅れてるが明日無理やり出たところで間に合う量じゃない。 …それに今は他の生徒と同じように過ごせる体じゃないんだ。 「先に入れ。着替え持ってくるから、そのパジャマは脱衣所のカゴに脱いどけ。」 「わかった。」 「シャワーはもう浴びなくていいだろ?」 「ん。」 「よし。すぐ行くからな。」 先に家へ入っていく楠本へそう指示をし、玄関の鍵を閉めてから俺も後を追う。 自室へひとまず荷物を置き、できるだけサイズの小さい着替えを持って脱衣所へ向かう。 「入るぞ。」 返答がない。 …中で寝落ちでもしたか? 一応ノックをしてから脱衣所の扉を開く。 と、奥で膝立ちのまま洗面台へ顔を伏せる楠本がいた。 肩で息をしては苦しそうにえずいている。 俺は着替えをその場に置くと来ていた白衣をカゴへ投げ込み、楠本の隣へしゃがんでは背丈を会わせる。 「また上がってきたか。」 「……しろ、い。」 その声にハッとする。 楠本の体を起こし、床へ座らせると洗面台に小さく溜まったソレを勢いよく水で流した。 白い粘着質の物はすぐに排水溝へと流れ込んでいく。 「…一日二日したら、無くなるか?」 「明日にはもう無くなる。」 「なら、いいや。」 「…楠本。」 「別に。吐いただけだから。」 「楠本。」 もう一度呼びかけると、ピクリと肩が揺れ青ざめた顔が俺を見上げた。 俺は片手でその目を塞ぐ。 「…俺とお前しかいない場所で強がるな。」 そんな言葉でコイツを救えるだろうか。

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