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男に体を無理矢理に起こされる。
壁にもたれかかるように座るけれど、体は言う事を聞かずほとんど力は入らなかった。
脱力したまま周りを見渡す。
足は肌に直接ガムテープを貼られていて、予想通り指まで固定されている。
下着まで脱がされているらしく、唯一体を隠すのはくすんだ色のバスタオル一枚だった。
部屋はゴミ屋敷にも近いような場所でカビっぽい匂いと生ゴミの匂いが鼻を突く。
けれど、今の俺にはこんな部屋がお似合いのような気もした。
「どれから食べたい?」
俺が部屋を観察してると、横からそんな声が聞こえた。
顔を向けるとそこには白米、味噌汁、納豆の三つが置かれていた。
正直どれも食べたくないけれど食べなければ何をされるかは想像できる。
「……ご飯。」
「ご飯だね。あ、うっかりしてた。せっかく隠し味用意したのにね。」
「隠し味……?」
その言葉に首を傾げると、男は1度向こうに行ってしまう。
すぐに戻ってきた男の手にはペットボトルが握られていた。
中にはドロリとした白い液体が半分くらいまで入っている。
それを見た瞬間、嫌な予感がした。
「たっぷりかけようね。」
「……ぃ"、…」
嫌だ、と言いそうになった唇を噛み締める。
あの液体がなんなのかなんてすぐに想像できてしまう。
ドロドロと液体が流れる度に生臭い匂いがするような気がする。
全てにソレをかけると男は今度こそ、と前置きを置いてニッコリと笑った。
「ほら、あーん。」
「……っ、ぅ……」
「皐月くん、口開けて。」
食べないといけないのは分かっている。
なのに口が開かない。
ガタガタと歯が鳴って、それから胸がムカムカとして吐きそうになる。
鼻を突く匂い、目に見えるソレが何もかもが気持ち悪くて仕方ない。
なんでこんな俺がこんな目に合わなきゃいけないんだ。
なんで、なんで。
…なんで、助けてくれないんだよ。
「ひ、っぎ…ぃ、っぅ"…、!!」
「悪い事は駄目だって言ったよ、ね。」
「…ぅ"、っぃ…っ、だ……ごめ、んなさ…い、食べる、食べ…る"、から……っ、!」
男の手が、タオルの下に伸びたかと思うとモノを潰れそうなくらいに強く握りしめた。
動かない身体が捻り潰されそうな痛みに痙攣みたいに揺れた。
許されないのに、どうしても抗ってしまう体が嫌になる。
「それじゃ、口開けて。」
「……ぅ、……」
「はい、あーん。」
スプーンに乗った白米が口の中に押し込められる。
生臭い、苦い、腐ったような味がする。
飲み込めない。
それどころか胃の中身全てが逆流してくる。
吐く、と口を開けかけた瞬間
「吐いたら全部飲んでね?」
という声がした。
吐きそうになった液体を喉でしめ、無理矢理ゴクンと飲み込む。
これが俺が生まれてきてしまった事への報いなら。
例えばこれがよくいうお仕置きってやつなら
「全部食べてね、皐月くん。」
俺は生まれてから今までどれだけの悪事を繰り返して来たんだろうか。
……俺は、ただ。
ただ。
「っ……は、い……、…」
生かされて
生きようとしただけなのに。
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