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「はい、あーん。」 「……っぅ"、…………」 気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い。 頭の中はそれしかなかった。 少しでも気が逸れれば今すぐにでもすべて吐き出すだろう。 丸呑みした全てが胃の中にかろうじて収まっている状態だ。 「お腹いっぱい?」 「…い、っぱい……です、」 そう話すのが精一杯ですぐに口を結ぶ。 すると男は頷いて「よかった」と言いながら、片手にガムテープを持っていた。 俺は尋ねる力もなくただそれを見ていた。 男はガムテープを千切ると俺の口を塞ぐように1枚、2枚と重ねていく。 「ん"、…っ…、!?」 「吐いたらもったいないからね。栓しなきゃ。」 息苦しさに、ゆっくりと鼻から息を吐く。 …これくらい平気だ。 男はガムテープを投げ捨てると食器も同じように部屋の隅へ追いやる。 それから傍に落ちていた布を拾い上げると初めと同じように俺の目を覆った。 また視界も言葉も失ってしまう。 言葉は余計なペナルティを増やすから無い方がいいかもしれないけれど。 「皐月くん、おじさんとたくさん遊ぼうね。」 そんな言葉を最後に俺の記憶は不確かなものになった。 確かに覚えている事は、ねっとりとした重い気持ち悪さと痛み。 男は自分が働いている間、俺の体中に玩具を取り付けたまま外出していった。 帰ってこれば気が済むまで俺を犯し満足するのと同時に、同じように玩具に弄ばれた。 視界はなくて。 音と痛み、それから強制的な恐ろしい程の快感に支配されていた。 俺はただ男を怒らせる事だけが怖くて逆らうことが出来なかった。 いや、逆らう手段すらその時はなかったのだけど。 恐らく、日曜日の夜。 同じようにわけも分からないまま体中を拷問のような快楽に支配されていた時。 暗闇の中で口に貼られたガムテープだけが外された。 「ひ、っ……ぃ、っぁ"…!!」 いつぶりかに発した声は気持ちの悪い甲高い声で。 死にたくて、思い切り舌を噛み締めた。 それなのに力は入らなくて喉から勝手に溢れる声が気持ち悪くて。 何もかも、訳が分からなくなっていた。 とっくに正常な判断なんてできないんだ。 「許し、て…っ、ゆる…しっ…ぃ…ごめんなさ、いご…めんなさ、っい…!!……嫌、っだ…っぁ、っあ……やめ、て…っも…う、……っ…」 いや 苦しくて 辛くて 怖くて もう何も知りたくなくて 叫んだ声が自分の耳に届くことさえ恐怖だった 「た、すけ……、っ…て…、…」 誰も 助けになんて来ないのに わかっているはずなのに 「………ゆる、し…て、…っ…」 掠れた声で呟いた 生きてて、ごめんなさい もう息だってやめてみせるから そしたらもう、もう怖いことはない?? 痛いことも、こんなに気持ち悪いことも? 「ぅ"、っぇ……っぐ、っ…しに"、た…い…ぃ、っ…」 何もかも吐き出して 許されないとわかってる命を殺して あぁ、楽に なりたいだけなのに

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