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目の前にいたのはこの学校の生徒だった。 でも、特に話した事は無いしその顔に見覚えはない。 …一番まずいのはさっきの独り言をきかれていたってこと。 「あはは、そんな顔ってどんな顔かな?」 「誰かを殺したいみたいな顔。」 「…冗談きついなぁ。先生をからかっちゃダメだよ?ほら、ここは保健室の前だからね。先生とお話したいなら場所を変えよっか。」 「中にいる皆木先生に聞かれたくないからですか?」 なに、この子。 ボクは踏み出しかけた足をそのまま下に下ろし、ボクよりも少しだけ背の高いその子を見上げた。 片目が髪で隠れていて表情がうまく読めない。 …陥れようとしてる? 「話はあっちで聞かせて。キミ、あんまり人の言うこと聞かないタイプ?」 「気になったから聞いただけです。付いていきます。」 というと、すんなりと少し歩き出したボクの後ろへつく。 面倒なことになった。 …誰にも迷惑なんてかけてないはずなのに。 もしこの子がタチの悪い生徒だったらどうしようか。 そんな風に思いつつたどり着いた先、教官室の扉を開く。 シンとした部屋に彼の声が響いた。 「俺、すぐ授業なんですけど。先生も授業なんじゃないんですか?」 「少し話してから戻ればいいよ。お腹痛かったですーとか言ってね。ボクは一時間目はおやすみ。」 「さっき授業って言ってませんでした?」 「…今度から扉の近くで大きな声で話すのはやめるよーにする。」 はぁ、とため息をついて椅子に座ると自然とその子もボクの向かいに座った。 どこのコースの何年生の誰かなのすらわからない。 見た感じ別に派手な生徒には見えないけど。 …弱み握られて揺すられるとかだけは勘弁して欲しい。 「ごめん、名前聞いてもいい?キミが誰かわからなくて。」 「千葉風磨です。一応先生の授業受けてるんですけど。」 「ってことは特進コースか。まだ覚えれてないんだ、ごめんね。」 「いえ。」 「で、千葉クン。何が目的かな。」 そう問いかけると、千葉クンは一度悩み込むような顔をしてから首を左右に振った。 その意図が分からずに首を傾げるとすぐに返事が返ってくる。 「別になにか目的がある訳じゃないんですけど。いつも世界一ポジティブみたいな顔した先生があんな声であんな事言いながらあんな顔するのが面白くて。」 「……面白くて?」 「先生って猫かぶりですか?」 「キミ、デリカシーないというかなんというか…別にキミには関係ないよ。別に目的ないならもういいよね。授業行きなよ。」 「でもこの事、俺が皆木先生とかに言ったら?」 その言葉にギクリとする。 結局、脅しなんじゃ…。 落ちかけてた目線をあげると相変わらず顔色1つ変えずに俺を見つめる目が合った。 何をしたいのか全く意図がわからない。 どうやら、思っているより面倒なのに捕まったらしい。

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