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都合のいい、耳あたりのいい言葉を探さなきゃならない。 こんな風に言葉を選んで話すのはいつぶりだろう。 「ほら、失敗は成功のもとって言うからね。子供が良くないことをして叱るのが全てじゃないからだよ。」 「模範解答ですね。」 「あはは、ありがとう。」 シュワシュワと泡の上がるコーラを喉に流し込み心を落ち着ける。 早くここを切り抜けよう。 さっさと要件だけ聞いてしまえば無駄な話はしなくて済む。 「好きなのははちみつレモンのこと。ちょっと怖い顔をしちゃったのは君の見間違いさ。それでいいかな?」 「わかりました。それじゃ、あの。これは脅しなんですけど。」 思ったよりあっさり引き下がったな、と息をついたのも束の間。 千葉クンは制服のポケットに手を入れると黒い掌くらいの袋を取り出した。 このサイズがなんなのかはよく見覚えがある。 L版サイズの写真と同だ。 だから、余計に嫌な予感がしたんだ。 「…何、かな。」 「どうぞ。見てください。」 差し出された袋を手に取り、中に入っている光沢紙を引き出す。 写真の中には大きく腕を振り上げるボクの後ろ姿、それから倒れるあの子、最後にあの子を抱き抱えるボクの姿があった。 これが何なのかは僕自身が一番わかっている。 「よく撮れてるね。」 「ありがとうございます。」 「……さっき脅しって言ってたけど、結局何が欲しいの?」 「そうですね。貴方に近付く口実が欲しくて。」 「はぁ…?」 ボクの問いかけへ千葉クンはそう答えた。 思わず呆れたような声を出してしまう。 写真を机の上へ置き、首を傾げると彼は壁にかかっていたカレンダーを指差しどこか楽しそうな横顔で言った。 「今週の土曜日、9時に駅前に来てください。普段通りの私服で。」 「行かなかったらどうなっちゃうのかな。」 「うーん、悩みますけど写真をどうにかします。」 「そうだろうね。」 あくまでもボクに逃げ道は無いらしい。 生憎、断る理由が無い。 むしろ断ることは出来ないだろう。 コップの中に残ったコーラを飲み干し、済ました顔をする彼へ微笑む。 「それじゃ週末、キミに会えるのを楽しみにしてるね。」 「俺も。」 誰かに支配されている痛みを少しだけ知れた気がした。

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