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ハンバーグを口へ押し込み焼けそうなくらい熱いソレに息を吹き出しながら、チマチマとナイフの先で肉を分ける先生を見つめる。
ミンチに解体してるんですか?
と聞こうとしたけど、聞いたらこの人は怒りそうだ。
「食べれそうですか?」
「少しなら。どれだけ食べたらばら撒くのやめてくれるの?」
「お腹いっぱいになるまでです。」
「…もう既に満腹なんだけど。」
「半分までは食べてください。」
そう言うと先生はハンバーグをちょうど半分に切ると片方を鉄板の端に避ける。
俺は端に追いやられたソレへフォークを突き立て自分の鉄板へ移す。
残されるくらいなら俺が食べた方がマシだ。
小さな一口を口へ入れては苦しそうに眉を顰める姿はいつもの明るい先生からは想像出来なかった。
俺以外、こんな姿を知らないと思うとどこか嬉しくなってしまう。
それは少し良くない感情だ。
「美味しいですか?」
「……うん。」
それは嘘じゃないらしい。
拒食症?もしくはそれ以上?
親に言われた事が原因だとしたらそれがどんな事かによる。
別に体系を気にしてのことではないだろう。
それなら、食べることに関してかその過程に関して干渉することだ。
……生きるのに必要不可欠な事をやめさせるレベルの言葉って一体なんなんだ。
「あんまり食べないって言ってましたけど、流石に食べなきゃ死にますよね?どれくらいの頻度で食べるんですか?」
「三日に一度は食べるよ。栄養食あるでしょ、あのー…栄養の塊みたいなビスケットとか。」
「あぁ、あのかなり不味いやつ。」
「そうそう。だから死にはしないよ。なんて言うのかな…栄養摂取はしてるからさ。」
付け合せの人参を口へ押し込みながらそう言った。
つまりこの人からしたらハンバーグを食べてるわけではなくて肉を食べて鉄分を摂取してるって訳だ。
異常でおかしな体。
この人をこんな風にさせた人と言葉が気になってやまない。
この人をもっと知りたい。
「先生、あの写真でどこまでいうこと聞いてくれるんですか?」
「…それボクに聞いちゃうの?」
「手っ取り早いかなと思って。」
「ふーん…そうだね、ボクはとある物のためだけに今は生きてるのさ。だからそれを失わないためならなんだってする。」
「とある物?」
俺が素直に聞き返すと先生は残り少なくなったハンバーグをブロッコリーと一緒にフォークへ突き刺しパクリと口へ押し込んだ。
それからゴクン、と飲み込むのと同時にニッコリと笑った。
それは教卓の前で大げさな身振り手振りで話す学校の先生の姿で。
「さぁ、キミはなんだと思う??」
「うーん…流れ的には皆木先生じゃないですかね。」
「惜しいね。70点くらいかな。」
「違うんですか。…それじゃ答えはなんなんですか?」
残ったコーラを飲み干し先生は指を立ててニコニコと笑った。
その怖いくらい綺麗で無邪気な笑顔に俺へどこまでも惹かれていく。
細い指が俺の唇へ触れると
「優と、優の一番の親友という立ち位置さ!」
とやけに明るく言ってはクシャリと笑った。
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