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「親友という立ち位置……?」
千葉クンはいまいちピンとこないらしくオウム返しをしては首をかしげた。
確かに、ボクらのことを知らない人からしたらよくわからない話だろう。
いやボク以外の人にはきっと理解されない。
「気になる?」
「そりゃ、もう。」
「でも秘密だよ。ボクとキミはまだ赤の他人だからね。」
「…先生は皆木先生のことを好きなんじゃないんですか?」
「そうだね。優の事は大好きだよ。」
そうボクが言うと彼は考え込むように手を口に当て俯いた。
彼がボクについて知っている情報はそんなに多くないから、今のままじゃまだ答えには辿り着けないだろう。
このあたりで飽きて手を引いて貰えると嬉しいんだけどな。
「千葉クン。ボクの食事は済んだんだけど、この後はもう解散でいいのかな?あんまりキミと長時間いたくないんだけど…」
「あれ、俺嫌われてますか?」
「この関係で好かれはしないよね、普通。」
「残念です。でも、できればもう少し…」
と、千葉クンが話しかけた言葉を遮るように机の上の携帯から着信音が鳴った。
画面にはさっきから話題によく出る親友の名前。
…本当、タイミングが悪いな。
「出ていいですよ。その代わり話が気になるので俺の目の前で出てくださいね。」
「…あぁ、はいはい。…優?どうしたの?」
彼の言葉に従い、仕方なくその場で電話に出る。
出来るだけ小さな声で話しかけると電話の向こうから沈んだ声が聞こえてきた。
『突然悪いな。…その、楠本のことなんだが。』
「あの子がどうかしたの?」
『抜け殻みたいに何も反応がなくなって。馬鹿みたいに勉強だけはしてるが、それ以外飯すらほとんど食べなくなってんだよ。…何言っても首振るだけで。』
「…何かあったの?前まで結構、感情は表に出してたよね。」
『それが……あ、どうした?あぁ。教えてやるからちょっと待ってろ、すぐに行く。』
ボクへの言葉が途切れて誰かへの言葉に切り替わる。
きっとあの子が来たんだろう。
…土曜日の朝に一緒にいる?
飯すら、って事はずっと同じ空間にいるってことだ。
あの子は優の家で暮らしてるってこと?
「優、ねぇ、聞きたいことがあるんだけど。」
『悪い。勉強教えてくる。また月曜日に話聞いてくれ。』
「その前に聞いて、もしかして…」
『またな。』
プチ、と音がなり電話が途切れる。
暫く電話を耳に当てたまま呆然としていた。
もう優はボクのものじゃない。
とっくの前にあの子のものになってたんだ。
その事実を、わかりかけていた事実を。
今、何もかも突きつけられた気がした。
「……先生、大丈夫ですか?」
「あんまり気分は良くない。」
そのまま携帯を机の上に置き、肘を机に立てると頭を預けて目を閉じた。
この寂しさを、孤独を。
少しでも紛らわせる口実が欲しい。
「千葉クン。食事が済んだら映画を見に行かない?気になってるのがあるんだ。」
「え?…先生がいいなら行きますけど。」
「よかった。」
今、一人きりになったら何か罪を犯してしまう気がしたから。
自分に向けられる歪な好意をボクは踏みにじるように利用した。
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