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肩肘をついたまま反対の手で本のページをめくる。
本の内容を読みたいのにざわざわとさわがしい教室の中じゃあまり集中できない。
「傷つけんならバレないところにしようぜ。」
「あー背中とか?」
「いいな。ほら、脱げよ。」
その声に顔を上げると、複数の生徒に囲まれた楠本はもみくちゃにされていた。
前は「やめろ」だとか「離せ」だとか何かしら抵抗していたのに今は一言も声をあげない。
腕で抵抗をしてるけど、あんまり意味は無いみたいだ。
前までド派手に暴れてた生徒も少しは学習したらしい。
制服を引き裂くなんて事もなくボタンを一つずつ外していく。
本人は両腕を後ろから拘束されてるせいでほとんどもう抵抗は出来てないみたいだった。
…可哀想。
だけど、別に俺が関わることではないし。
と思ってると横からずい、とクラスメイトが体を乗り出してきた。
「千葉ー、何読んでんの?」
「え?普通に小説。でもあんまり読めてない。」
「ま、教室うるさいもんな。Ωが帰ってきたしこれからまたうるさくなりそ。」
「…確かに。これからずっとこの調子だと困るな。テスト前なのに。」
「なー。大人しく休んどけばいいのに。」
そんなたわいもない会話をするとすぐにどこかに行ってしまう。
友達がいないわけじゃない。
弁当も誰かしらと食べるし、休み時間も話す時は話す。
固定のグループ…とまでは言わなくてもいつも同じメンバーでなんとなく過ごしてる。
クラスの立ち位置じゃ一番無難なとこだろう。
「背中にさぁ、Ωってでっかい印入れね?誰でもわかるように!」
「お、いいじゃん。誰かカッターナイフある?」
聞こえてきた会話に驚いて顔を向ける。
彼は上半身裸の状態で壁に3人係で体を押し付けられていて、そのまま動けないらしい。
1人がカッターを持って楠本の方へ近付いていく。
それは、流石にまずいんじゃ。
カッターの先が肌に埋まるのと同時に、彼の体がガクガクと揺れた。
けれど悲鳴も何も聞こえなかった。
俺はただ本の隙間から赤く流れる血と、そんな異様な光景を眺めていた。
先生がこのイジメと言うには残酷すぎる光景を知ったらどう言うんだろう。
「正直、いい気味だな」なんて言うのか。
「先生として注意しなきゃ」と言うのか。
それともいい笑顔で
「いいなぁボクも混ざりたいなぁ。」なんて言うのか。
一番最後な気がする。
あの人、性格悪いしな。
「馬鹿、深く切りすぎだろ!血止まらねぇじゃん。」
「気持ち悪。これはグロイわ。」
声をBGMに小説に目を通す。
正直話はほとんど頭に入ってこないけど。
楠本がどうなろうと俺には関係ないから、どうでもいいや。
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