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「──この場合、日本の法律では立証するのは難しいとされています。ここから先はそこについて深く学んでいきます。それじゃ、教科書次のページ。」 その日は朝から、なんとなく体調が悪かった。 体が重くて目覚めが悪くて。 寝不足か、それとも風邪でも引いたか。 なんて呑気なことを考えていたそれど三時間目が始まったあたりからいよいよおかしくなってきた。 頭がぼーっとしてなんだか何も考えられない。 この感覚は、久しぶりだった。 「っ、……ぅ……」 ボーッとしていた頭が一瞬だけ冴える。 発情期だ。 そう気付いた瞬間、慌ててカバンの中に手を押し込んだ。 カバンの内ポケットに皆木に貰った薬を入れたままだ。 水と飲め、と言われていたけれど今は流石に水筒を出すのは難しい。 とりあえず薬さえ飲めれば…と何度も内ポケットを行き来するがおかしい。 確かにそこに入れてあったはずの薬がない。 「楠本くん、どうかしましたか?」 俺が慌ただしくしてたせいだろう、そう声をかけられ体が過剰に反応する。 顔だけを向けて首を左右に降ると教師は「そうですか。」とだけ言って授業を再開した。 一度呼吸を整え、鞄の中を覗き込む。 けれどそこにはやっぱり薬は無い。 そう確信した時にはもう症状がかなり出てきた。 体に力が入らなくて頭が重い。 息が上がって心臓がバクバクと煩いくらいに暴れ出す。 お願い、こんなところで発情期なんかなったら。 「……なぁ。」 「だよな、これ。」 教室がザワザワと騒ぎ出す。 俺は頭が重くて机に突っ伏したままもう動けない。 ハァハァ、と犬みたいな息が口から漏れ涎が垂れる。 気持ち悪い、そう思うのは俺が一番だ。 「皆、静かに。私語は慎んでください。楠本くん大丈夫ですか?」 教師はそう言いながら俺へ近付いてくる。 この教師はまともらしい。 頼んで保健室へ連れていってもらおう。 皆木には薬がなくなったことを言って、それから… もう、駄目だ。 頭がぼーっとして 「大丈夫じゃないですね?」 なんにも 「こんな匂いさせて、穢らわしい。…ここに何人のαがいると思ってるんですか?」 かんがえ、らんない 「いいですか、楠本くん。貴方が全部悪い。」 耳が熱くてよく聞こえない。 突っ伏してたはずの体がぐるんと回って上を向く。 天井が見える、あれ?なんでだろう。 「教室の鍵を締めて、窓も。」 「先生、まじ?」 「いいですか。これは自己管理不足の生徒への当然の罰で指導です。皆さん好きに、やりなさい。」 視界がぼやけてよく見えない。 閉じない口に誰かの指が押し込まれる。 苦しい。逃げられない。 どうしよう、流石にこれは隠せない。 いや、違う。 これは嫌だ、な。 みなき、に…あいたい…… 「目見ろよ。これ。溶けてるみたい。」 「顔も何もしてないのにどろどろじゃん。涎垂れて気持ち悪。」 動かない右手に力を込めて、ポケットに手を入れる。 指先に丸い金具が当たった。 あと、少し。 人差し指に力を入れるとパチンと小さな音が鳴って反動と同時にビビビビビビビビ!!と警告みたいな音が鳴る。 その音さえも、水の中みたいに遠く聞こえて。 これで本当に助けに来てくれるのかな。 俺、助か 「何してんだよクソが、うっせぇんだよ!!」 「っぅ"、…っ……ひ、っ…、!」 「なんかコイツポケットに入れてんぞ。」 「なんだそれ?叩き割るか踏み潰すかしろよ。」 いたい、いたい。 でも、だいじょ、うぶ。 ほら たすけに、きて、くれるって 「楠本くん。悪い事はしちゃいけませんよ。」 もうきこえないし、なにもみえない

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