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あたまのなかがからっぽだ いたい?いたい? わからない だって、何だかふわふわして 何もかもきもちよくて いいや、きもちいいわけじゃないんだけど。 ふれた所がじんじんあつくて なにかにとけてしまいそうな どこかにとんでってしまいそうな 「これ、意識あんのか?」 「おーい楠本、起きろよ。面白くないだろ。」 ずちゃずちゃ遠くで音がする だれかの声がよくわらない。 ねむい このまま、ねむって にどと目をさまさなければいいのに。 そしたらさ だれも、どんな人もおれにおこったりしないのに 「変な音鳴ったのにな、誰も助けに来てくれねぇなんて可哀想なの。」 「おい、そろそろ変われよ。」 閉じた目が開けない。 瞼が重くて息が苦しい。 腹の奥が痛くて、体が鉛みたいで。 力が全く入らないんだ。 何度も奥に熱いものを感じた。 もう熱すぎて何かわからなかった。 代わる代わる、動けないのに体は揺さぶられて。 確かにブザーを鳴らしたはずなのに、金具を引き抜いたはずなのに。 皆木はいつになっても助けに来てくれない。 『すぐに行くからな。』って言ったのに。 『お前が呼んだら、どこにでも助けに行く』って 『我慢しなくていい』って言ってくれたのに。 あぁ、これってまだそんなに辛い事じゃなくて まだ我慢していないといけない事で。 こんな小さな事で呼んだからきっと呆れて帰ってしまったんだ。 もっと、我慢しなきゃいけなかった。 ごめん、ごめんなさい もっと強くなるから 『繰り返します。3年生特進クラスの次の授業は自習となります。』 もっと、我慢できるようになるから もうこんなちっぽけな事で助けて、なんて言わないから 「まじ?奏斗先生なんかあったのか?」 「あと一時間遊べんじゃん、ラッキー。」 「その後昼休みだろ?やりたい放題じゃん。」 だから、嫌いにならないで。 俺、こんなだけど 皆木がいなくなったら もう 一人で 帰るとこも、行くとこもないよ 「ぅ"、……っ、ぶ…ふ、っぅ……!」 「おい。コイツ、ゲロ吐いてんぞ。」 「くっそ汚いな。」 苦しい。 息、出来ない。 このまま死んだら 誰か、泣いてくれるのかな 頭に家族の顔が浮かんだ どれだけ考えても笑顔が思い出せなかった。 いつも、皆、怒ってたな。 あれ? 俺、何のために生きてたんだろ。 何のために生まれたんだろう。 俺誰かのためになった事、あったっけ。 ガクン、と体が前に倒れた。 揺さぶられる腰の痛みももう感じない。 これが俺の命の答えならきっと辿り着くところは決まってるから。 どうか、どうかお願いだから。 二度と目を 覚ましたくない。 「楠本、今日の晩ご飯は何がいい?」 「いつも俺に聞かないでアンタが決めろよ。…アンタの金だし。」 「あ?俺はもう20何年好きなもん食い潰してんだよ。何でもいいから好きなもん言ってみろ。」 「ぅ……オムライス、とか。」 「オムライス?」 「…ケチャップの、卵が厚いやつ。」 「まだまだ舌はお子様だな。」 真っ暗闇の中、最後にそんな会話を思い出した。 どうでもいい会話が好きだった。 なんとなく話してる時間が幸せだった。 皆木がたまに馬鹿にするように笑って、俺はそれに噛み付いて。 でも何だかおかしくて二人して笑って。 温かくて甘いはちみつレモン。 お風呂上がりのドライヤー。 ふわふわのタオルと、プリントTシャツ。 おやすみ、とおはよう、がある あの生活が 好きだった。 もう それすらも望まないから。 深く 深く、眠りたい。

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