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とにかく保健室にいたらまずいだろう、と先生を連れ出した。 二人の足が自然と向いたのは最初に話した教官室だ。 先生は教官室に入るまで俯いたまま顔を上げてくれなかった。 「先生、鍵あります?」 「…右のポケット。」 「右のポケット…ここかな。」 ジャケットのポケットに手を入れる。 これか?と引っ張り出しても入ってるのは飴やガムばっかりで鍵はない。 …この人お菓子は食べられるのか。 次にズボンのポケットに手を入れると、今度こそ鍵を見つける。 鍵を引っ張り出すと先には花がガラスにコーティングされたアクセサリーが付いていた。 この人の趣味らしくはない。 とは思いつつも特に触れずに鍵を開ける。 先生はそのまま奥へ進むとポスンとソファに座り背もたれに体を預けた。 「先生、大丈夫ですか?」 「…あーあ。優が嫌がることしちゃったなぁ。」 先生はそう言って下手くそに笑った。 閉じた目にはまだ薄らと涙があって、笑ってるくせに声はとびきり哀しそうだった。 俺は向かいに座りその言葉に首を傾げる。 「何したんです?」 「いっぱいだよ。…ね、教室の事教えてくれない?どうしてあの子がレイプされたか。」 「んー…どうして、と言うか普通に発情期にやられたっぽいですね。先生が許可したら皆襲いかかったというか。」 「やっぱりそっか。その後は?」 その言葉にあの時の状況を思い出す。 皆が襲いかかって、楠本はそのままされるがままで。 後は… 「そう言えば、途中なんか警報?みたいなのが鳴ったんですよ。」 「うんうん。それで?」 「でも暫く鳴った後、すぐに生徒に踏み潰されて…そのまま何も無かったですね。」 「まーボクしか聞いてなかったからね。」 「え?」 その言葉に思わず聞き返した。 先生しか聞いてなかった?何を? …もしかしてあの警報の様な音は、誰かに助けを求めるための物だった? それを先生しか聞いてなかったってのはどういう意味だ。 「あれね、優が持たせた防犯ブザーなんだ。すごくいいヤツで鳴らしたら携帯にすぐ通知が来る。端末が壊されたらその情報も来るんだ。」 「それを先生だけが聞いてたってのは…?」 「優がたまたま席外してたから。ボク、その通知消しちゃった。」 先生は満面の笑みでそう言った。 後ろの窓から太陽の光が差し込んで髪がキラキラと光る。 その笑顔が何よりも恐ろしくて全身に鳥肌が立つ。 「…消した、って皆木先生には言ってないんですか?」 「言ってないよ。優ったら何にも知らないでボクと一緒にオセロしてたんだよ。楽しかったなぁ…」 「あの、まさかと思いますけど自習になったのは…?」 「レイプの後の授業なんて嫌だから。それにボクがあの子を助けるなんてそんなの少しおかしいでしょ?」 そう言う先生に少し苛立った。 極めつけに 「…でも少し後悔。結局、優があのこの所に行っちゃったもんね。」 と言うと不貞腐れたように頬を少し膨らませる。 楠本はどうでもいいけれど。 確かにそれに怒っているのではないけれど。 それは、少し人間らしくは無いのではなんて偉そうに思ってしまった。

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