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「皆木優くん?」 「…やっぱり。……ごめんね、ここで死んでもらうよ。」 パン、と乾いた音が空で弾けた。 舞う血しぶきを見ながら あぁ。 どうせ夢だ。 なんて冷静に考えていた。 「ぃ、ってぇ……」 ズキズキと痛む頭を抑えながら体を起こす。 目が覚めたのは自宅のベッド。 昨日の記憶は全くない。 自分で家に帰ってきたのか、それとも誰かに面倒をかけたのか…それすらも危うい。 二日酔いで揺れる視界にもう一度目を閉じると廊下からパタパタと足音が聞こえてきた。 一瞬、皐月なんじゃないかなんて錯覚に陥ったがその歩幅はどう考えても違って。 「優ー!朝だよ!ほら、起きて起きて!」 「ぅ"…、朝から声でかいんだよ、お前は。」 朝一で吹っ切ったそのテンションは少ししんどい。 目線の先にはニッコリ笑った奏斗に溜息をつきつつも自然と笑顔になる。 奏斗に引き起こされるように体を起こす。 頭の重さと体のだるさが酷い。 「あー…その、一応聞くが昨日の俺、相当酔ってたよな…?」 「そうかな?気持ちよさそうに酔ってただけだったよ。家に着いてからはぐっすりだったけど。」 「本当か?迷惑とかかけてなかったか?…あと、家までどうやって帰った?」 「あはは、覚えてないの?自分でタクシー呼んでお喋りながら帰ってたよ。ちょっと悪酔いしたボクの面倒まで見てくれてたしね。帰ってからも自分で水飲んでもう寝るからーって。 ちゃんとベッドまで歩いて行って朝までぐっすり。」 その言葉に安心する。 どうやら迷惑はかけてないらしい。 奏斗は付け足すように「安心した?」と笑った。 「あぁ。なんかやらかしてたらどうしようかと思った。」 「あはは、大丈夫だよ。久々にお酒飲んだから記憶なくなっちゃったのかなぁ。」 「かもな。まぁいい。…そうだお前も朝飯、食べるだろ?」 「優が寝てる間に作ったよ。優、ぐっすりだったからボク先に食べちゃったけど。さっき温め直したから食べよ?」 奏斗はそう言うと俺の手を引いた。 どこまでもよく出来た親友だ。 悪いな、と断って引かれるままに起き上がる。 ふと、奏斗の後ろ姿と揺れる髪を見て気付く。 「髪、伸びたな。」 「……そうだね。」 奏斗は一度振り向くとニッコリと笑った。 いつもの笑顔のはずなのに何故か少し悲しそうな気がした。 伸ばした手で触れようとした髪が跳ねて遠ざかっていく。 『…ずっと、ボクは笑ってるから。心配しないでね。』 「……んぁ?」 「え、なに?何その声。」 「…いや、なんでもない。」 夢の中で聞いた言葉だろうか。 知らないはずの奏斗の言葉にゾクリと心臓が鳴った。 奏斗はもう そんな事、言わないはずなのに。

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