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毎日、朝と昼は床に転がって過ごした。 学校に行かなくなって人と話さなくなって僕は少しずつ言葉がわからなくなった。 ご飯は一日ほんの少しだけ貰えた。 お父さんは毎日僕に「食べたら食べるだけお前は汚くなっていく。」って言いながらご飯をくれた。 最初はお腹が空いてそれが楽しみだったけれど、空になったお皿を見たお父さんが 「あぁ、食べたんだな。」 と、ゴミを見るみたいに言うのが怖くてだんだんご飯を食べなくなった。 暫くしたらもうお腹は空かなくなった。 どんどん痩せて腕が細くなるとお父さんは優しく「綺麗だな」と褒めてくれた。 その時だけ、優しくしてくれた。 * 「かな、皆が来てくれたぞ。」 「……ん。」 お父さんはある日を境に、僕の事を"かな"と呼ぶようになった。 僕はもうなんでも良かったから何も言わなかった。 いつも通り、お父さんに連れられてあの部屋に行くといつもより沢山の人が部屋にいて僕を見ていた。 お父さんは僕を床に座らせると大きな声で呼びかけた。 「かなも少しずつ成長しております。今なら受け入れられるかと。」 その声に僕はぼーっと前を見る。 視界がチカチカしてよくみえない。 ご飯を食べなくなってからあんまり良く考えられなくなった。 ええと、今がいつで何時なのかなとか。 よく分からないけどそれでいいやと思ってしまうようになった。 お父さんの話の意味もよくわからなくなった。 「かな、立って。」 「ん。」 「その台に身体をつけるんだ。」 「ぅ……?」 お父さんにそう言われるけどよくわからず首を傾げると、右手を大きく振り上げられ顔の横にその手が勢いよくぶつかった。 体がフラフラして床に倒れ込むとそのままお父さんに引きずられる。 いたい それしかわからなかった。 お父さんが台の上に僕の上半身を乗せるとそのまま縄でぐるぐると僕の体を台に縛り付けた。 僕はぼーっと目の前の人たちを見つめていた。 誰か、助けてくれないかな。 なんて。 「今、受け入れる準備をします。」 お父さんはそう言うと僕のお尻に触れ、ヌルヌルした液体を塗り込むように撫でた。 それが僕は何より苦手だった。 僕が恥ずかしくて、怖くて俯くとお父さんは主切り僕を叩いては「顔を下ろすな」と大きな声で怒鳴り込む。 僕は何度も 「ごめんなさい 許して」と謝るけど、一度も許してくれなかった。 「ぅ、っ…あ"、……」 「汚い声を出すな」 「ごめ、…んなさ、…ぃ…」 前を向いたまま ごめんなさい を続ける。 後ろにお父さんの大きな指が入って、痛くて苦しくて息ができなくなる。 どうして誰も助けてくれないの。 痛い、痛いよ 「お前は汚い、わかるな?」 「…き、たな…い…」 「綺麗な声で繰り返すんだ。いいか?…汚い、悪い子だって。」 お父さんが耳元でそう囁く。 綺麗な声? 涙がボロボロ落ちて、ヨダレが垂れて。 僕はこんなに汚い 「ぼ、くは…汚い、悪い子…っぼく、…は…」 「そうだ、やめるなよ。」 「……僕は、汚い、悪い子…ボ、…くは……ッ…」 いたい 苦しい 「僕、は…汚い、っ…ぼ、クは……」 嫌いだ、全部嫌いだ 「……ボク、はわるいこ…ボクは、汚いっ……」 こんなせかい、だいっきらいだ

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