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夢の中のボクは、かっこいいヒーローの人形を持ってお父さんと遊園地を走り回っていた。 笑顔のボクを見てお父さんは笑っていた。 今よりも優しい顔で。 「ん"、……」 頭とお腹が痛くて目が覚める。 でも、目が覚めたのはいつもの硬い床じゃなくてふかふかのベッドだった。 ここはどこ? ボクが起き上がって周りを見渡すとそこは綺麗な絵本の中みたいな部屋だった。 大きなベッドと広い部屋。 大きな窓には白いフリフリのカーテンがかかってて、それから床には大きな絨毯があった。 絵本の中に来たのかも。 って、ボクはベッドから飛び降りてよろよろと歩き出す。 絵本の中なのに頭が重いのもお腹が痛いのも変わらなかった。 「…奏斗?」 ボクが歩き回っていると、扉が開いて優がこっちを見ていた。 優は手に持っていたものを隣の机に置くとクスクスと笑った。 「元気そうだな。」 「ん……優、がいる。」 「いたら悪かったか?」 「ううん。…絵本の中、だと…思ってた。」 「残念ながら俺の家だ。まだ治ってないんだからベッドに戻れ。」 「…ん。」 そう言われてボクはベッドに戻る。 もぞもぞ布団に潜り込んで顔だけ出すと、優はベッドの近くの椅子に座った。 それからボクの頭を1度ぽんぽんと撫でると悲しい顔をする。 「雨の中、待たせてごめん。俺のせいで風邪ひいたんだ。」 「ううん。ボク、傘もってなかったから。優が来てくれて…元気になったよ。」 「…そうか。なぁ、奏斗は親に嫌われてるのか?」 「え?」 優はボクの目を見ずにそう言った。 親に嫌われてる? お父さんと、お母さんに? 「うーん…お父さんは多分嫌いになっちゃった。お母さんはわかんない。」 「わからない?」 「……もうずっと会ってないし、…起こしに来てくれない。」 「…そうか。」 「優は?」 ボクがそう聞くと、優は爪でカリカリと手首の包帯を掻きながらつまらなそうに 「会ったことない。」 って言う。 聞いちゃいけないこと聞いたんだ、って思ったけど優はすぐにまた話し出した。 「遠いとこにいるらしいけど、俺だけ置いてどこか行った。居ないのが嫌だったが奏斗に会っているのも大変なんだなと思った。」 「…そっか。ねぇ、優は学校行ってないの?」 「え?」 「だって皆お昼はランドセルなのに優は違ったから。ボクと同じ?」 「いや、…多分同じじゃない。俺は行きたくなくて行ってない。」 「そっか。ボクは行き方忘れちゃった。」 ボクと優の会話は途切れ途切れで、でもなんだか懐かしい感じがして。 お友達と話す時はこんな感じだったなって。 ボクと優はきっと全然違って。 でも、少しだけ似てて。 「もし奏斗が一緒なら。…学校、また行きたい。」 「…ん。ボクも、優と一緒がいいな。」 「っはは…俺ら会ってまだすぐなのに。なんか変だな。」 「変かなぁ。皆、すぐお友達…なれるよ。」 「それは奏斗の性格のおかげだろうな。ありがとう。」 「ん!」 よくわかんないけど、僕がそう言うと優は嬉しそうに笑った。 僕もなんだか嬉しくて同じようにニコニコ笑う。 こんな風に誰かと楽しくお話するのは久しぶりで、だから余計に優と友達になれたのが嬉しくて。 僕は少し寒い体とか、鼻水とか頭が痛いとか全部忘れてその時だけは何よりも楽しかった。 優はきっと特別なお友達なんだ。

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