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いろいろ記念
*他サイトとfujossyさんの、イイネやお気に入りのキリがいい時に何も書かずに見過ごしてしまったためクリスマスに無理やり記念にしたお話です。
*編集画面では問題ないのですがなぜか公開すると一文字ずつ空白が入ります 誰か助けてください ふたりを幸せにしてたまるかという誰かからの陰謀ですか???
Twitterよりリクエスト
→皐月がうさぎと遊んでるところ
Twitterよりリクエスト
→クリスマスくらい幸せにしてあげてほしい
(時間が足らず、奏斗先生とお兄ちゃんは出てきません)
。・:+°ハッピーメリークリスマス。・+°
ジングルベルが鳴る街の中。
赤い帽子と緑の木。
それから、白い息と。
「だから、一個持つって言ってるだろ…!」
「甘えとけ。何よりお前、落としそうだろ。」
「っ…じゃあ、一番軽いのでいい。」
「軽いの?…ほい。」
ポケットから投げ出した使い捨てカイロを握りしめて顔を真っ赤にして怒るのは、クリスマスだってのに物騒な顔をした恋人でここはそんな赤色に染まったショッピングモール。
クリスマスパーティすらしないなんて言うコイツの家に呆れて、それならやれるとこまでやってやろうってド派手に買い物をしてる最中だった。
「カイロは荷物じゃないだろ!」
「ポケット熱くて仕方ないんだよ。俺のためだと思ってあったまっとけ。」
「…ぅ…、帰ったら手伝う。」
「よし。」
やっと諦めてカイロを擦る恋人を見て満足する。
大きめの茶色いダッフルコートは袖が余って余計に幼く見える。
指先だけ見えた手にカイロを握って、俺を見上げた。
「あと、買い物は?」
「んーこんなもんだな。ケーキは奏斗が買ってくるし食いもんはお前の兄貴が買ってくんだろ?」
「ん。飲み物だけ買ってこいって。」
「わかった。その前に寄るところがあるからそっち行くぞ。」
「寄るとこ?」
紙袋を持ち直してショッピングモールの外を指さす。
皐月は首を傾げて、ピョコピョコと俺の横についた。
「その前に。」
邪魔だから、とコインロッカーに荷物を預けると律儀に"荷物"だと預かったカイロまで入れるもんだからそれがおかしくて声を上げて笑ってしまった。
「そんな笑うことかよ…!」
「いや、っ…笑うだろ、っはは!…カイロコインロッカーって、…中サウナにする気か??」
「っるさい、…お前なんて嫌いだ…!」
「ふーん嫌いか、そうかそうか。嫌いでいいんだな?」
からかうつもりでそう言うと、皐月は小さく声を上げてから困ったように言葉を探す。
性格が悪いけれど困ったような、迷ったような顔が好きで。
気は強いくせに悪くなりきれないコイツに惚れていて。
とうとう黙り込んでしまった皐月の頭をクシャクシャと撫で、クスクスと笑う。
「困らせて悪かったな。お詫びにいいとこ連れてってやる。」
「………いいとこ…?」
「あぁ。お前が絶対に喜ぶところな。」
「喜ばなかったら殴る。」
「顔以外にしろよ。」
冷えて小さくなった手に、ロッカーの中のカイロを握らせその上から手を握った。
ひんやりと冷たいのに温かい。
体温を共有してる感覚にじんわりと熱くなる。
「皐月、はぐれるなよ。」
「…はぐれないから手、離すな。」
不器用に呟く声に頷く。
当たりにはカップルが歩いていて、俺達もその1人で。
そんな中じゃ、冷たい風もそんなに悪くない。
*
「ぅ、……! 」
「う?」
まだ店に入る前の看板を見て皐月は目を輝かせた。
ついでに変な声を漏らすと、俺の手を離してガラス越しに店の中を覗きに行ってしまう。
途端に寒くなって身を震わし落ちたカイロを拾っては皐月の隣まで向かう。
「うさぎ……」
「な、絶対に喜ぶところって言っただろ?」
「…見たの小学校ぶり。」
「あー…確かに見ないかもな。ほら、そんな所で見てないで中入るだろ。」
「ん。」
俺の声に振り向かずにガラスの向こうのうさぎを見つめながら皐月が歩き出す。
皐月がうさぎが好きって聞いたのは随分前、声じゃなくて文字でだった。
すっかり忘れていた事を今になって思い出しこんな日に連れてきたってわけだ。
外の寒さから店内の温かさはむしろ暑いくらいで、皐月は赤いチェックのマフラーを外しながら落ち着かないように周りを見渡す。
どこもかしこもウサギだらけ。
いわゆる動物カフェってやつだ。
俺からすればもこもこぬいぐるみみたいなのが歩き回ってて鳥肌もんだが、まぁ皐月が喜んでるならいいだろう。
「予約してた皆木です。」
「どうぞ、中でうさちゃんと遊んであげてくださいね。」
「だそうだ。」
「ん、…!」
そういうなり、部屋の奥へと入っていく。
俺はすぐそばの座布団に座りながらそんな皐月の背中を見つめていた。
恐る恐る目の前の毛玉に手を出すとすぐにそれは皐月の手へ耳を押し付ける。
と、
「ふ、っぁ……」
「…あ?」
「……ふわふわ、してる…」
「そりゃ毛だらけだからそうだろ。」
聞いたことないような声をあげて喜ぶ皐月に思わず笑ってしまう。
最初はビビっていたがすぐに抱き上げたり撫でたりしてはニコニコと笑う。
家でもそんなに笑わないくせに、ウサギさんはご偉い身分だ。
「動物がでうさぎが一番好きだったんだっけか。」
「ん。」
「なんでだ?」
「なんでって…昔、飼育係してたからそれがきっかけだったと思う。…可愛いし、ふわふわしてるし。あと、怖くない。」
「犬とか猫は怖いか?」
「…んー…ちょっと。」
ウトウトするうさぎを膝に乗せて撫でながら、皐月はそう呟く。
俯いて伏せた目はどんな感情化はわからないが思ってるよりコイツは小心者なのかもしれない。
「ウサギ、飼うか。」
「………へ、?」
「うちで。一番お前が好きなの。」
「でも…安くないし、俺が好きなだけだし…」
「その代わり世話はお前がちゃんと見ろよ。俺はお前がそうやって嬉しそうにするなら、構わない。」
そう言うと皐月は目を輝かせて俺を見上げた。
膝の上ではスヤスヤと眠るうさぎ。
あぁ、こんな顔もするのか。
今日、また新しい目を知った。
「…ありがと。」
「あぁ。」
照れたように笑う皐月の頭を撫で、俺も笑う。
ウサギだらけの部屋で笑う男とその男を撫でる男。
ちょっと気味が悪い光景かもしれない。
でもまぁ、これもクリスマスのご愛敬ってことで。
*
「んーっ」
「満足か?」
「大満足。」
とうとう日のくれた外に出る。
白い息を吐きながら嬉しそうにニコニコ笑う皐月に俺も満足し、歩き出す。
さっきの荷物をとって家へ帰れば奏斗とコイツの兄貴がそれなりにいいセッティングをしてくれてるはずだろう。
「さて、帰ったらケーキに肉にジュースになんでもあるぞ。」
「ん。」
「何から食べる?」
「わからない。…でも、一番美味しそうなやつ。」
「それじゃチキンだな。」
確かに何から、って言っても初めてなら想像出来ないだろう。
クリスマスを知らないなんてそれこそ悲しいやつだ。
なんで思いながら、ふと思った。
そういえば俺だってまともに好きなやつとパーティなんてした事ないなと。
「なぁ、皐月。」
「ん?」
「これからは毎年、来年も…その次も。一緒にパーティしような。」
「まだしてもないのに気早いな。」
「うるさい。言うだけタダだろ。」
「まぁ…そっか。」
マフラーを上げながら、顔を半分隠して皐月が笑う
それから眩しいくらいの笑顔で
「来年も、よろしく。」
なんて言うもんだから。
俺も嬉しくて、そのほほに手を当てて顔を近づける。
「よろしくな。」
柄にもなくむちゃくちゃに笑って2人で顔を見合わせる。
他人になんと思われようがどうでもいい。
幸せに、二人で生きていこう。
メリークリスマス。
カラン、と乾いた音が鳴る。
誰かの暖かい手に顔をうずめて。
「……あれ。」
目を薄く開くとそこは汚れた床で。
俺はゆらゆらと体を回しながら前を見上げる。
霞んだ視界と、冷たい空気。
あと 閉じた扉。
それは幸せな夢で
いつか "来るかもしれない" そんな未来。
夢の中の 隣にいたあの男は
なんて 名前だったか。
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