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布団を頭まで数字を数えるのに一向に眠れない。 そんなの当たり前だ。 発情期は我慢で収まるようなものじゃないんだから。 目を開き、ぼうっとする視界の中ゆっくりと布団から這い出ていく。 薬が無ければ耐えられない。 明日も明後日も学校はあるんだ。 なんとかして薬を手に入れないといけない。 「は、ぁ…っ……」 熱い息を吐き、壁に捕まりながらゆっくりと立ち上がる。 医者である父親に言えば本来薬なんていつでも貰えるはずのものだ。 この家の裏から直接繋がった父親の病院まで行けばなんとかなるはず。 納得して貰えれば、の話だが。 力の入らない身体に鞭を打ち無理やり歩いていく。 ヘトヘトと廊下を進んでいくと、階段の下から足音が近づいてくるのに気がついた。 その音は徐々にゆっくりとなりそして目の前で止まった。 「…お前、また?」 「ぁ、…っ…いい、から…構うな、…」 「構うな?そのまま父さんのとこまで行くわけ?途中で倒れるか殴り飛ばされるかの二択だろ。」 「……薬、ないと…おか、っ…し、く…」 「ふーん。ま、そんな顔するなよ。ほら。」 目の前に現れたのは仏頂面をした兄だった。 兄はほら、と言うと片手に錠剤の入った小瓶を持つとそれを左右に揺らした。 ザラザラと揺れるそれを見た瞬間、思わず片手が小瓶へと伸びる。 が、力の入らない俺の手なんて簡単にかわされてずっと上へ引き上げられる。 「お行儀悪いぞ。」 「…っよこ、せ…」 「折角貰ってきてやったのにその言い方か?まぁいい。これ部屋に置くから部屋まで来いよ。ちゃんとやるから。」 「わか、った…」 これ、とお茶の入ったマグカップを指さすとそのまま兄は自分の部屋へ戻っていく。 もう限界が近い。 片手でギュッと胸を抑えたまま続いて兄の部屋へ入ると、さっきのマグカップと一緒に錠剤が2錠差し出される。 「ほら。」 「ありがとう、…」 受け取ってすぐにそれを喉に流し込む。 やっと、この苦しさと望まない欲望から開放される。 兄にマグカップを取り上げられ、壁に持たれたまま目を閉じ薬が効くのをただ待つ。 これは皆木にもらったのとは違い即効性じゃないのかもしれない。 と、考えていた時だった。 急に方を掴まれ身体をベッドへ突き飛ばされる。 何をされたのか理解できないままぼーっとした頭で天井を見つめていると視界へ楽しそうに笑った兄の顔が映り込んできた。 「薬、もう効いただろ。」 「…全く、…何も、変わって…な、…」 「まぁ本人は分からないだろうな。それ、避妊薬だから。」 そう言うと兄は俺の前髪を思い切り掴み枕へ押し付けると楽しそうに笑っていた。

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