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冬休みとクリスマス からの 兄弟喧嘩。
24日です。おはようございます。現在……昼の1時です。疲れが抜けません。
昨日はあれから、4時間ぶっ通しで遊び呆けて。春哉と一緒に帰ったんですが、何故か社長の奥さんが呼んでると一緒にお邪魔しました。
とりあえず、無茶苦茶優しい人でした。
歳は50代前半で、母親が生きていたら同じ位だよと春哉が教えてくれました。心ちゃんが、サンタの帽子被って、今から楽しみにしてる姿がもう。可愛くて可愛くて。
違う、そこじゃないんだよ。
何でか、その人春哉と心ちゃんを外させて俺に何を言うのかと思えば、まさかの春哉君を宜しくねと来た。
なんのこっちゃと思ったけど、どうやらこの家に来ると学校の話をするらしい。そこに頻繁に出てくるのが、俺。それから、いつもの面子。
『私は、あの子達の本当の母親ではないけれど……自分の子供の様に思ってるの。だから、今とても嬉しいのよ。』
泣くかと思ったね。どうやら、この人。若い頃に病気をして、子供を授かれなかったらしい。旦那さん……社長さんとも話して子供は諦めたそうだ。養子の話も出たらしいけど、辛くなるからって断ったんだって。
『こうして、春哉君がまた笑顔になれたのは貴方達のお陰なのよね。ありがとう。あの子達のお母さんに代わって、感謝するわ。』
『と、とんでもないっす。俺も、春哉達と逢えて良かったです。』
『でも、あまり派手にやらかして、春哉君を泣かせたら……分かってるわよね?』
『そりゃもう、はい。へへ。』
うふふ、えへへ。
なんつうか、精神的に疲れた。まじで。いや、すげぇ優しかったんだけど……何だろうね。多分、春哉の性癖?っての?知ってる風な。逆らえなかったよね。つうか多分、付き合ってるの知ってるわ。春哉本人というより、多分夏生さんが愚痴った風だと思われる……帰ってきたら、徹底追及だな。
まぁ、良いや。うん。明日のが楽しみだわ。
さて、今日の俺の予定ですが……特に無し!!です!!夜まで待機!!だから、ゲームします。賢悟から借りたやつ。それで、夜まで暇潰しです。弟?あいつなら、部活。よーやるよな。年明けすぐに練習試合らしいよ。つっても、一応はクリスマスだし。真っ直ぐ帰って来るって言ってたけど……明日は彼女とだってよ。羨ましくねぇし。俺も春哉と一緒だし。天使2人と一緒だし。……2人きりとは、いかねぇけどな。
***
25日。快晴……とはいかなかったけど、曇りです。朝の11時です。心ちゃん、今日も笑顔が素敵です。
春哉とは、春哉の家で待ち合わせにした。さすがに、社長の奥さんの家で洗濯するわけにもいかないから、洗濯行きの荷物を入れておく為です。あと、俺が個人的に用事があったから。
「で、何?」
「あ、これ。親父と、母ちゃんから。」
「……開けても?」
「うん。」
俺の膝から心ちゃんは春哉の隣りに移動してしまった。ちょっと寂しい。
「……手袋だ……。」
わぁ、春哉ったら。良い笑顔。
「ほら、心の分みたい。」
そうそう。ヒマワリのついた、青いやつね。
春哉はモスグリーンで、夏生さんは黒にした。って、親父が言っていた。俺?俺は鞄にしてもらった。一部分が革のやつでさ、結構デカめだけどすげぇカッコイイやつ。使ってる。今日のお泊りセットが、すっぽり入って助かってる。あ。弟は、勿論バッシュな。
「……かわいい!!ありがとう!!」
「いーえー。今度家来たら、直接言ってあげてねぇ。」
「うん!!」
「ありがとう。」
ま、本当は俺もあげたいもんあるんだけど……春哉個人に買ったから、もうちょっと様子見で。
それから3人でぐだぐだしながら、昨日何したとかの報告会。そうこうしていたら、昼の12時を過ぎていた。
「あ、電話だけさせて。」
「うん。」
社長の奥さんに電話だって。これから行くと春哉が伝えると、二言三言話して終わった。
「じゃ、行こうか。」
「うん。」
「これ!!これ!!」
「落とさないでね。」
「うん!!」
はい、誠の家に出発です。
***
「お世話になります。」
「良いのよ。心ちゃん、夜までおばさんとお出かけしない?」
誠の家に行くと、春哉は早速心をマコママに預けてしまった。まぁ、良いんです。俺達の準備があるからね。
心ちゃんは良いの?って目で春哉を見上げて、春哉は良いよって笑った。
「行く!!」
「よしっ。じゃぁ、お洋服見にいこっか。」
なんて。マコママは上機嫌。娘がいたらこんな感じかしらとか。マコちゃんも、小さい頃は可愛かったのよ?なんて。
「宜しくお願いします。」
「そんな、かしこまらないで。今日とても楽しみにしてたのよ。来てくれてありがとう。じゃ、心ちゃん。行きましょうね。」
マコママと手を繋いで、俺達に手を振る心ちゃん。ヒマワリが素敵だね。おっと?今チャンスじゃね?人様の家の、玄関だけど。
「なぁ。」
「ん?」
「これ、やる。」
「……何?」
「あー、クリスマスプレゼント。」
「……僕、何も買ってないよ?正直、心の事で精一杯だった。」
「良いよ、俺があげたかっただけだし。」
俺が渡したのは、小さな袋。
「……ブレスレット?」
「うん。」
黒革と銀細工のブレスレットだ。ほっそりとした春哉の腕に合うと思って買った。店は、誠に良い店知らないか聞いてこっそりバイト帰りに買いに行った。
「……ありがとう……。」
「ん。」
「……龍司。」
「何?」
ちょいちょいと手招きされて、一歩だけ近付く。ふっと、目の前が暗くなってすぐに明るくなった。唇に柔らかいものが当たって、離れてからキスされたと分かった。
「……龍司?」
「……おぉ……ちょっと、あの、やばいっすね。」
「何それ。」
「俺、これで当分生きていける。」
「何言ってんの。」
そう言って、笑い合って。顔真っ赤だって言い合ってから、誠の部屋に向かった。まぁ、からかわれますよね。
「で、蓮は?」
「着替えに取りに行ってる。」
どんだけ泊まるんすかねぇ。つうか、あの時の荷物で足りないってどんだけだよ。
まぁ、そんな蓮はとりあえず放って、俺達は心ちゃんの為に準備を始める。つっても、春哉はケーキを作って、俺達はプレゼントをリビングのクリスマスツリーの足元に置くだけなんだけど。
「暇だな。」
「手伝って来いよ。」
「辰彦が手伝ってるよー。」
「蓮、遅くね?」
「いつもこんなもんだ。あいつ、割と歩くのおっせぇんだよ。」
「へー、意外。」
「速く歩いても疲れるだけだからっつってた。」
「あいつ、本当に高校生かよ。」
そんな話をしていたら、俺達の携帯がなった。テーブルの上にある5台の携帯全部。
「……蓮だ。」
「こいつ、何してんの。」
「ウケる。」
【洗濯干してたら、隣りの家の犬がバカやってんの見えた。】
そんな文面と一緒に、大型犬が池ポチャしてる瞬間の画像。
「あいつん家って、どんな感じ?」
ふと、俺は誠に尋ねてみた。誠は少し考えてから、一言「豪邸。」と言った。
「マジで?」
「マジだ。聞いたろ?自分の部屋として使ってる蔵があるって。」
「だからって豪邸ってわけでもなくない?」
「そうそう。」
「……日本家屋、広い庭。外車が数台と、あいつが使ってる原付と海外製のチャリ。それから、蔵まであって大学受験の為に改装までした。それのどこが豪邸じゃねぇんだよ。」
うわ。マジの豪邸でした。
「マジだった。」
「そう言ってる。日本家屋と蔵は、爺さんの持ち物だったんだと。遺産だな。」
「あー、そういう事。」
「そういう事。」
まぁ、賢悟も割とって感じだけどな。賢悟の家は、着物を売ったり直したりしてる。元々呉服屋だったんだけど、最近は着物着る人が減ってるからって修繕とか丈を直したりとかもしてるんだって。でも、長男が既に継いでるから賢悟は気楽に将来を考えてるらしい。美容師になるってさ。
「つか、あいつ家事やんのな。お手伝いさんいるんだろ?」
「いるけど、最近始めたって。どこの大学かは決めてないけど、どっちにしろ高校出たら家も出るから今のうち覚えるんだと。」
「え、誠は?」
「何で俺が出てくるんだよ。」
「だって、付きあいたっ!!何で!?」
「賢悟、マジ黙れ。」
もう1発食らうか?って手付きと顔で、賢悟は黙った。俺も黙ってる。痛いんだよ、誠の。容赦無いから。
「痛い……何なんだよぉ。」
「言い直せ。聞いてやるから。」
「くそぉ……だからさ、蓮が家を出るって事は、誠も付いてくの?って。同じ学校にするの?」
「……何で。」
その返答は堂々巡りってやつだぜ、マコちゃん。
「だから、さっきの質問になるんでしょうがー。」
ほらな。
それでも、誠は認めないらしい。ぎっと賢悟を睨んでから、溜息をふっと吐いた。答えては、くれるらしい。
「でも、誘われてはいる。」
「一緒暮らそう?」
俺が聞くと、眉間にシワを寄せて面倒そうに頷いた。何が嫌なんだろうか。そのまま、聞いてみたら以外と満更でも無さそうな答えが返ってきた。
「嫌っつうか、他人と暮らすのって面倒しかないだろ?」
「……え、今更じゃね?」
そう思わず言ってしまえば、賢悟か加勢してきた。
「俺もそう思う。どんだけ泊まり行ったりしてんだよってツッコミ入れたい。」
激しく同意。
「なー。ホントだよ。どんだけだよ。」
さっき暇潰しに雑誌を貸してと断り誠の部屋に行けば、所々に置かれた蓮の私物。
充電器に、誠のじゃないワックス。誠がよく着る革ジャンの隣りには、グレーのPコートと黒いマフラー。今は、誠のジャンバー着て行ってるんだと。
あと多分、蓮が着てたんだろうスウェットとシャツは、ベッドにきちんと畳んで置いてあるし。テーブルには筆箱が2つと、重なった参考書やら誠は読まないだろう英字の本。どんだけだよ、マジで。
つうか、英字の本とか何なのあいつ。日本人なら、日本語のを読めよ。
「一緒に暮らすのと、泊まるのとは違うだろ。」
「まぁ、違うけど……。」
「シェアってだけなら、まだ良い。お互い、精神的に一線引ける。でも、あいつの言う一緒に暮らそうは、そういうんじゃねぇんだよ。」
俺と賢悟はお互いの顔を見合わせ、言いたい事分かった?分かった。とアイコンタクトをした。
「誠は、どうしたいの?」
「どちらでも良い。つうか、考えるのも面倒臭い。学校決めたら、返事するつった。」
素直じゃない。と言い掛けたが、やめた。殴られそうだし。チラッと賢悟を見れば、同じ様な顔をしてる。言いたい。でも、言えない。みたいな。
ふと、甘い香りが俺の鼻を掠めた。賢悟も反応して、誠も視線は台所に向かっていた。うやむやに終わってしまった話題にはっとして、誠を見たらふっと笑って立ち上がり台所に行ってしまった。俺と賢悟も、誠を追うように台所に向かった。
もやもやと、考え事が増える事が大人になる事だと言うなら。俺は大人になりたくはない。難しい事を考えるのは、苦手だ。
蓮と誠の2人も。難しく考えすぎてる気がするけど、深く考えて答えを出すのが誠の優しい所だとも思う。
……難しいねぇ。
付き合ってる男女なら、一緒に暮らそうと言えばイエスかノーで済む。大学だか就職だか絡んでもだ。でも、男同士ってなると世間の目が纏わり付いてくる。俺は気にしない。春哉は、気にするだろけど。
違う、俺達の事じゃなくて。
あの2人だと、将来までもが絡んでくる。
蓮は医者。誠は弁護士。
社会的地位だか何なんだかまで絡んでくる。非常に、面倒臭いし難しい。
「……めんどくせ。」
つい声にしてしまったが、皆春哉の作るケーキの土台やら生クリームに意識が行っていて安心した。目の前には、真っ赤な苺。甘酸っぱいっすねぇ。
「龍司。苺食べないでって。」
「1個です母さん。」
「母さんじゃない。君と賢悟で2個だよ。やめて。」
賢悟もかよ。
自分の事で精一杯なのに、他人の事考えるとかよくないな。やめよ。うん。誠と蓮なら、上手くやれるよ。何だかんだ、一緒にいるし。
生クリームを作って、騒ぎながら賢悟と俺で真っ白くなったケーキを飾って。誠と辰彦と春哉は俺達を眺めていて。そうこうしていたら、蓮が帰って来た。
「……お前、そんなのも作れたんだな。」
「心の為に覚えた。だから、苺を食べないでってば。」
蓮、同じ事してる。
6人でがやがやしていたら、あっという間に夜になっていた。
***
心には、出来るだけの事をしたいと思っていた。
誕生日会も、そうだった。
俺は、何も出来なくて。夏生には、言えなくて。でも、社長と奥さんからは毎年頂いていた。ご飯や、ケーキも食べて行かないかと事前に聞かれていたが、毎年断っていた。
『夏生が我慢してるから、我慢します。』
毎年、毎年。同じ事を言った。夏生には、バカかと言われてけれど俺はそれで良かった。
だから、心には我慢しない様に。出来る事は全てやってあげたかった。友達は呼べないけれど、遊びに行くと言うなら行かせた。迎えも行った。夏生の代わりに、出れる行事や保護者会はなるべく行った。
同情の目なんて、気にしなかった。ただ静かに、良い子に、夏生を思う弟を。心を思う叔父として、座って話しを聞いた。そうしていれば、同情の目なんて気にならなかった。
そうしていれば、心に対する態度はおかしくならなかった。
「おい。」
「っ、ぁ、ごめん。人の家なのに。」
「気にするな。どうしたんだ。」
「何か、眠れなくて。」
ぼんやりと、誠の家のリビングの窓から空を見ていた。近く感じるのは、マンションだからだろうか。
「ふぅん……。」
「誠は?どうかした?」
「知らん、何か目ぇ覚めた。」
誠の広い部屋に、5人で眠っていた。ベッドには、部屋の主である誠。床には5人。心は誠のお母さんと一緒に。
「知らんって。」
「何か飲むか?」
「あ、ありがとう。」
誠は台所に向かい、俺は動かずまた外を見た。少しして、ココアの甘い香りが漂ってきた。コップを2つ持った誠が、また俺の隣りに立った。
「ん。」
「ありがとう。」
「……お前さぁ。」
「うん?」
「もし、蓮と上手くいってたらどうしてた?」
「……どういう意味?」
「俺達と同じ学校に来てたか?」
ふと、同じ事を前原と話した時考えてたなと思い出した。
「夏に、前原と僕の2人で話したの覚えてる?」
「龍司が必死こいてた頃な。」
「うん。その時、考えてた。」
「そうなのか?」
「うん。どうなってたかなって。」
「話したのか?」
「いや。考えただけ。多分、誠達に会わずに、前原と同じ学校に行って2人だけの世界を作ったんだろうな。って。それは、長続きしないんだろうな。って。」
「ふぅん……まぁ、そうだろうな。」
「うん。」
クロユリを植えたあの日。全部封じて、仕舞っておこうと思った日。
「……これで良かったと、思ってるよ。」
「それなら、良いんだけどな。よし、寝る。」
「……僕、もう少しここにいて良いかな?」
「あぁ……なら、これも着とけ。」
そう言って、誠は自分が着ていた上着を俺に差し出した。カーディガンを着ているのに、更に羽織れと言っている。
「……ありがとう。」
「早く寝ろ。コップは、水入れて台所置いておけよ。」
「うん。」
誠はそれだけ言って、行ってしまった。
まだ、当分眠れそうにないけれど。このココアを飲みきったら、布団の中に戻ろう。
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