29 / 34
レッツ、夢の国前半戦。
「おふぁああよぉ……。」
「おはよう、龍司。」
朝の……7時です。駅です。蓮と誠以外と待ち合わせです。眠いです。仕方ないです。前はバスだったからあれだけど、今日は電車を乗り継いで行かないとだから……。え?前?前の夢の国は、映画の夢の国だよ。今日は、ネズミーの夢の国ね。ごめんね、紛らわしくて。
ちなみに、龍太は俺より少し前に出て彼女を迎えに行ってるらしい。凄い。俺の弟凄い。服貸せって言われた時は、どうしてくれようかと思ったけど。
今日は、春哉の装いが違う。多分、夏生さんグッズだろう。肩に掛けてる小さめのバッグとか、モッズコートとか。また、首の所まで閉めちゃって。リアルファーか?それ。フサフサして暖かそうで、くそ可愛いなおい。
「ちゅうしたい。」
「……寝ぼけてるの?」
「寝ぼけて無いよぉ。可愛い春哉が悪いー。首元とか顎とか埋まってる春哉可愛すぎかよー。」
「止めて、ちょっと。重い。」
ガードレールに寄り掛かってる春哉に俺も寄り掛かる。本気の抵抗じゃなかったから、ほんの一瞬だけくっ付けた。あ、頬にね。春哉は拒否するわけでも、殴るわけでもなく俺を見てきたので、あれ?いけんじゃね?って思って少しずつ距離を詰めた。
「おい、そこのバカップル。」
はっと声の方を見れば、スタイリッシュ野郎が2名。
「……隙アリ!!」
「むっ!?」
「痛いっ!!」
頭叩かれた。割とマジで。
え、俺?今日はモノトーンだぜ。グレーのロングパーカーと、ワインレッドみたいな色のピーコートと濃い黒のスキニー。このスキニー、裏地がフリース材で温かいんだよな。オススメ。あ、マフラーってかネックウォーマーも黒です。
春哉、誠の後ろに逃げちゃった。
「龍司、歯ぁ食いしばれ。」
蓮の拳は丁重にお断りした。
「スタイリッシュ野郎共、おはよう。」
「何それ。」
「だって、チェスターコート着る高校生いないだろ、普通。」
蓮は、黒のチェスターコートにグレーのマフラーを巻いてる。誠は、黒革のライダースにグレーのネックウォーマーをつけてる。何だ、そのネックウォーマーの巾の広さ。俺も欲しい。
ふと、俺の携帯が鳴った。というか、ほか全員のも鳴ったらしい。内容を見た俺達の空気が、一瞬で固まった。
賢悟
【トリプルデート、楽しんで来てね。】
辰彦
【妹達にストラップ買ってきてくれると、ありがたいなぁ。】
「……辰彦は、まぁ、良いよ。巻き込まれてる立場だから。」
俺がそう言うと、誠が憮然とした顔で「賢悟め……。」と呟いた。背中に阿修羅がいる。つうか、起きてこんなん送ってくるなら来いよって思うんですけどね。
「つうか、待ってる間の暇潰しどうする?」
「それは、預かってる。」
そう言ったのは誠で、いつぞやかの土産物である和柄のバッグから割り箸が入ったビニール袋を取り出した。
「いつの間に。」
「昨日の夜。遅刻したら賢悟と辰彦を置いてけって言われたんだけど……こういう事か。」
沈黙。
いや、まぁ気を遣ってくれたと思えば良いんだろうけど……首謀者がいないってどうなんだろうな。俺も共犯だけど。
「まぁ……こうなったら腹括るしかないよね。」
朗らかに春哉がそう言った。寒空の下、長身の部類に入る男子高校生4人の俺達。楽しまなきゃ損だよな、と切り替えていこうと思います。
「……おい、お前の弟いつ来るんだよ。」
そう言ったのは誠。俺は携帯に連絡は無いか確認して、時間も見た。
「そろそろかな。」
なら、と4人で移動して自販機で飲み物を買う。温かい飲み物で胃を温めながら、蓮と誠は俺に弟はどんな感じかを聞いてきた。俺自身ではよく分からないからと、春哉にバトンタッチした。
「顔は、似てるよ。兄弟だし。でも……誠を足して2で割った雰囲気。人懐っこい龍司とは、ちょっと違うかな。あと、今日は多分凄く楽しみにしてるはずだよ。」
と、意地悪そうに微笑んだ春哉。ファンシーな物が割りと好きだと、以前当てたからだろう。まぁ、確かに昨日はすげぇそわそわしてたな。8時には、部屋に篭って寝る用意してたみたいだし。
そんな話しをしていたら、ロータリーの向こう側に見知った形が見えた。
「あ、弟来たわ。」
隣に華奢な女子がいる。皆が俺の視線の方向を見た。
長身の部類に入る男達の視線に気付いたのか、ぴたりと女子が止まり慌てて何かをしながら龍太に話し掛けている様だ。
……おーおー、髪型気にしてたのか。龍太の手が女子の髪に触れて、何か言ってる。
「つうか、自分の弟のああいう所、見たくなかったぁ……。」
何あれ。甘々じゃないですかぁ。
「まぁまぁ。」
なんて、春哉が言っているが「心ちゃんも、いずれはあーだぞ。」と言ってやると、春哉の背中に般若が見えた。
「心がそんなの連れて来たら……どうしよう、確実に抹殺する手筈考えないと……。」
超物騒。
般若を背負った春哉を、早々にこちら側に引き戻し2人がこちらに来るのを待った。
「おはようございます。」
「お、おはようございます!!」
俺は皆に龍太を紹介してから、春哉達の紹介をして皆自分の事はこう呼べと言った。それが終わってから、彼女の紹介を龍太がした。
「うちのクラスの委員長で、大川桜さん。です。」
「大川桜です。えっと、今日はお願い致します。お義兄さん、いつも龍太君にはお世話になっています。」
「お、おぉう。こちらこそー。龍司で良いよー。」
おにいさん。が、義兄に聞えたのは気のせいだろうか。
「あ、あの、私も桜って呼んで下さい。」
見せてもらった画像とは違い、今日は動きやすさを重視している様だ。揺れるポニーテールと、短めのモッズコートとマフラーとジーンズ。割とシンプルだ。コートの裾から淡い水色のニットが見える。
わぁ、めっちゃ良い子。と思っていたが、桜ちゃんの視線が俺達から春哉に固定された瞬間、色々吹き飛んだ。
「は、春哉さん!!初めまして!!あの、お話しは色々聞いてます!!龍太君の言う通り、お美しいです!!」
「……龍太、後で面貸せや。」
「不可抗力だ。」
「マジで、今日ちょっとお兄ちゃん奮発したろうとか思ったけど無しな。」
「何でだよ。」
「龍司、止めなよ。えっと、桜ちゃん。今日は宜しくね?」
「……さ、桜ちゃんだなんて、そんな……ありがとうございます……!!」
桜ちゃん。うっとりした顔でそんな事言いました。
「弟、あれお前的には良いのか?」
誠が若干引き気味に聞いてる。勿論、桜ちゃんの嗜好の件は報告済みだ。
「まぁ……はい。慣れましたし、中々楽しいです。視点が。」
「そういう所は、龍司に似ているな。」
「そうですか?」
「心が広い。」
「人タラシ。」
「聞えてんぞ、スタイリッシュ野郎共。褒めるなら盛大に褒めろよ。」
で、黙るのね。龍太まで黙っちゃったよちくしょう!!
「そういえば、人数足りない。」
「あ?あぁ……バックレ。」
俺はそう言って、先程のラインの画面を龍太に見せた。「ふぅん……。」とだけ反応したので、携帯はすぐに仕舞った。
そろそろ行くか。と誠が言って、俺達は電車に乗る為駅へと向かった。
***
「あ、蓮さんだけ学校が違うんですね。凄いですね、街一番の進学校なんて。」
「茶髪だけどな。」
「予備校サボりまくってるけどな。」
「予備校位、別に良いだろ。茶髪も関係無いだろ。」
えー、電車内。がらっがらです。横並びに座って、春哉と龍司は寝ました。早々に。まぁ、仕方ないよね。遠いし。
「えっと、春哉さんと蓮さんが同じ中学で。他は、その来れなかった方お2人が同じであとは別なんですか。」
「そうそう。」
「それでもこれだけ仲が良いと、ちょっと滾りますね。いつも一緒にいるとか、もう。最高ですね。」
あー、羨ましいとかじゃないのね。
「ネタにするなら、すでにくっついてるそっちにしてくれ。」
誠がそんな事言うから、にんまりと笑った桜ちゃんが俺を見た。すっげぇ笑ってる。もうすんごい。
「そうします。春哉さん、すっごく綺麗ですし。お兄さん、春哉さんといるとわんちゃんっぽいので、わんこ攻めですね!!」
かー、キラキラした顔で俺を見ないで!!
「……やべぇ、鳥肌立ったわ。」
そんな誠の声が聞えたが、桜ちゃんには通じないらしい。俺を見て、満面の笑みを浮かべたままだ。
「そろそろ起こしたらどうだ?乗換えだ。」
「おっと。」
俺は春哉を、桜ちゃんが龍太を起こして乗り換えです。
***
「……長い。」
まぁ、予想通りの行列ですよね。日曜日だし。春哉がもう、ぐったりしてる。並び始めて10分位なんだけどね。いつも思うんだけど、多分、友達がいるから本読むのは控えてるんだと思う。
それに、地べたに座ってとか出来るわけがないから立ったまま待つしかない。
「……やるか。」
誠がおもむろにそう言って、例の割り箸を取り出した。何本作ったのかと見れば、王様を入れて6本。元々、あの2人は来る気が無かったらしい。
先にルールを決めて、女子がいるからどうしようという話しになった。さすがに1人で何かさせるわけにもいかないので、今は必ず2人指名する。という事になった。他は、中学生2人がかなりノリノリなので問題無いという結論になった。
「最長の時間は、どうする?」
「長めにしとくか。」
「10分で良くね?」
「だな。」
蓮と中学生2人は俺達の会議を傍観していた。仕方ない、あの時はいなかったしな。暴君がいないだけ、多少はマシだろう。
では、1回目いきます――。
「……またか。」
「まただね。」
またです。王様は、蓮。2と4が手を繋ぐ。勿論、恋人繋ぎ。まさかの、春哉と誠のコンビ再来。
桜ちゃん?テンションぶち上がって写真撮りまくってるよ。ていうか、デジカメ持って来たとか準備良すぎだろ。聞けば、替えのメモリーカードも2枚持って来たらしい。しかも、ギガ数が半端ないっていうね。
「はぁ……眼福。」
「良かったな。」
「うん!!」
良い笑顔で何よりです。蓮も何枚か写メ撮ってたけど。
それにしても、列が全然進まない。チケット売り場は開いてるみたいだけど、開園にはもう少し時間がある。ぐだぐだ話しながら、最初に何に乗るかとか相談もする。
「……無理。」
「立てよ兄貴。」
「っざけんなよ愚弟!!筋肉重い!!」
今度は春哉が王様。1が5をおんぶ。まさかの兄弟でっていうね。桜ちゃんはもう、通常運転なんだろうね。
「……後姿も面白いんじゃないか?」
「あっ、さすがです蓮さん!!」
何してくれちゃってんすかね蓮君!!つうか、気付いたら春哉と誠いないし。2人はどこかと聞けば、飲み物を買いに行ってるらしい。何が欲しいとか聞かれてないけど!?
「進んだ。」
「くっそ、マジ重い!!」
「頑張れ。」
「荷物くらい降ろせバカ!!」
これだけで疲れた。
何回かゲームをやっては喋ってを繰り返していたら、チケット売り場に到着し開園もしていた。6人でチケットを買い、桜ちゃんが龍太の手を引いて走り出す。春哉は「走ると危ないよ!!」とか、お母さんかよって感じの注意を投げ掛けていた。
***
最初から飛ばさず、絶叫系の優先パスを取る事に専念した。その時間になるまで、緩いアトラクションに並んだり乗ったりした。また、割り箸が。役に立つの何の。
「軽いね。」
「や、やっぱり降りますぅ!!」
王様は俺。3が4をおんぶ。春哉が、桜ちゃんをおんぶしている。桜ちゃんの荷物は朝からずっと龍太が持ってるから、春哉の掛かるのは桜ちゃんの体重と服の重さだけ。
「おっと、あ、暴れないでっ!!」
「す、すみません……写真、良いですか?」
「……あははっ、良いよ。」
比較的穏やかで、イベント事らしい高揚感を感じながらアトラクションを消化していった。園内を巡って、午後はどうするか話しながらレストランに入った。
「っ……甘っ……。」
さすがバレンタイン直前。桜ちゃんの為に比較的デザートの種類が多い店にしたが、これは予想外だった。まさかのチョコレートフォンデュのタワーが、店のど真ん中を占拠していた。店の中がチョコの匂い凄い。凄い、マジで。
「……お前、大丈夫か?」
「皆で別のお店に行きましょうか。」
「いや、多分大丈夫……。」
俺と春哉がやりとりの成り行きを眺めていたら、店員さんが近寄って来た。ふと、窓際の席がガラガラなのが目に入った。春哉もそうだったらしく、俺は店員さんに聞いた。
「あの、あっちの奥の方って、その……匂い強かったりします?」
一瞬、店員さんの顔が何のこっちゃみたいな顔をしていたが、俺の言いたい事が分かると「いえ、空調を別の方向にしていますので、弱いですよ。」とにこやかに教えてくれた。
「あ、では6人そこでお願い出来ますか?」
と春哉が頼むと、店員さんはどうぞと案内してくれた。確かに、向こう側に向かってる空調と、こちら側に来てる空調がある為匂いは弱い。「あぁ、ここなら平気だ。」と蓮も笑ってくれたから一安心。
それから席に座って、蓮は桜ちゃんに向かって謝った。
「悪かったな。ここまで匂いがキツイと思わなくて。」
「いえ、甘い物苦手だったんですね。すいません、私の為に。」
「良いんだ、今日のメインだしな。でも、本気で驚いた。」
高校生男児4人で、ど真ん中に聳えるタワーを見た。あれは、俺も驚いた。いや、あるとは書いてあったし写真もあったんだよ。ただ、大きさが分かんなくてさぁ。
「アレはなぁ。」
「無いだろ。」
蓮と誠はかなり顔を顰めてる。まぁ、蓮は甘い物苦手だし、誠は食べるけど進んで食べないって感じだし。
「さすがにやり過ぎだよねぇ。」
「まぁな……でも、あの女子とちびっこが群がるのは分かるわ。」
春哉も少し困っていて、俺は何となく状況把握に努めた。
「心、連れて来たいなぁ。」
「あ、それな。でも、身長的に来てもつまんないじゃん?」
「まぁね。来年か、その次の年あたりかな。」
俺と春哉が心ちゃんについて話していると、桜ちゃんが心ちゃんが誰なのか聞いてきた。
「僕の兄の娘。姪っ子だね。これから、小学2年生になるんだ。」
ほら、と春哉が携帯の画像を見せると桜ちゃんは可愛いとはしゃいだ。こういう所は女子だな。
この店、ビュッフェ?とかいうやつなんだよね。とりあえず荷物を置いて、中学生2人組が先に食事を取りに向かった。俺達は、のんびり待機。
「お前の弟さ、雰囲気真逆だな。」
「そう……かな?」
「春哉の言う通り、半分誠入ってる。」
「無表情って事なら、蓮じゃね?」
「俺?無表情か?」
「無表情。」
「……春哉に言われたら、どうしようもない。」
「でも、そういう事で言ったわけじゃなくて。口の悪さがね、誠寄り。」
「あぁ。」
「誠、それで納得して良いのか。」
「ねぇ、マジで俺の立ち位置ってお前らの中で最下位なの?構って!!俺の弟だから!!」
「で、喧嘩した割には普通だな。」
「あれ?無視?や、分かってた。えぇっと?それはちょっとした行き違いって分かったからな。元通りですよ。」
行き違いって何だ?と蓮と誠に聞かれ、かいつまんで話すとか出来ないから春哉に任せた。春哉が2人に話して、俺が補足して、2人は納得したらしい。
「お前、ちゃんと兄貴してたんだな。」
誠に言われてしまった。
「失敬な。」
中学生2人組が戻って来たので、俺達も取りに行く。そういえば、蓮と誠どうしよう。勝手にやるとか言ってたけどなぁ。あ、春巻き美味そう。
店内はほぼ女子。男もいるが、どう見たって付き添いとかお父さんとかだ。でも、俺は他の事が気になる。この、きゃっきゃした雰囲気に油注いでんじゃねぇの?って思うこの感じ。心当たりはありすぎる。
「……お前らやっぱり目立つな。」
このスタイリッシュ野郎共と春哉め。蓮はコートを脱ぐとグレーのタートルネックのニットで、誠は白いシャツと薄手の黒いカーディガン。春哉は真っ白な大きめのセーターを着てるし、まさかのスキニーだからおみ足舐めて良いですか?みたいなテンションになりかけてる俺ね。あ、萌え袖ってやつか春哉のは。
「お前も中々な。」
「そうか?」
「男で長いパーカー着てる奴、初めて見た。」
「女の子みたいだよねぇ。」
「だな。」
「え、軽いバッシング受けてる?だって、超暖かいよこれ。裏地モコモコしてて。」
それぞれの格好について話しながら食べたい物を取って、席に戻った。ジャンケンで飲み物を取りに行く係を決めた。俺と、春哉と、桜ちゃん。尋問される予感しかしねぇ。でも、桜ちゃん春哉にめっちゃ懐いてるな。美男美女。素晴らしい風景。
「え、告白?」
「はい。どっちからなんですか?」
「そんなに気になる事なの?」
「私は気になります。」
なんつう会話だよおい。えっと、蓮はホットコーヒーで何もいらないっと。コーヒーメーカーがめっちゃ本格的なんですけど。スイッチおーん。
「龍司からだよ。」
言っちゃうのねぇ。コーヒーメーカーがコポコポ言い始めた。良い匂いする。チョコの匂いと混ざって、ラテみたいな匂い。
「……まさかの。え、ちなみになんですけど、シチュは……?」
まさかのって何だ、まさかのって。
「しちゅ?あ、シチュエーション?」
「はい。」
「……うーん……それは言わないとダメ?」
「え?気になりますぅ……。」
「……僕の一番大事な思い出だから、大事に仕舞っておきたいんだけどな。口にしたら、消えてしまいそうでしょ?」
その言葉に反応して、2人の方を見たら春哉が微笑みを桜ちゃんに向けていた。桜ちゃんは俺に背を向けているから、表情は分からない。春哉の視線が動いて、俺を見た。
「ね?」
……何あれ、天使?いいえ、春哉です。いいえ、女神です!!男だけど!!自宅なら抱き着いてる!!つうか、もう、何かもう、堪えらんない。めっちゃ良い笑顔で、首傾げるとか。
「最高かよ大好きですありがとうございますちゅうしたい!!」
「ぶん殴るよ、龍司。」
「そんな春哉も大好き!!」
何か叩く物欲しい!!机とかバンバン叩きたい!!
「お2人とも天使でしたかごちそうさまです!!」
「違う、春哉は天使じゃない。女神なんだよ。テスト前とかはな、ブラック春哉様がご降臨なされてスパルタ授業が始まるんだよ。」
「何ですかその二面性。最高じゃないですか。2度美味しい感じじゃないですか。」
「それが違うんだな。俺と2人って時間も入るから、3度なのだよ。」
「なん、だと……春哉様、素晴らしい存在です。」
「2人共止めて、本気で。ほら、桜ちゃん。龍太君の分、持って行くんでしょ?」
「はっ、そうでした。えっと、ウーロン茶ウーロン茶。」
手馴れた様子で氷を2つと、ウーロン茶を注ぐ。それから一緒に、席へと戻った。
飲み物を配って、ご飯を食べて。受験の話しや、学校の話しをして。龍太と桜ちゃんの馴れ初めも聞いた。単純に、部活をしている龍太に一目惚れをしたらしい。
「で、いつ本性曝け出したんだ?」
「誠さんの口の悪さ、最高ですね。本気で罵って欲しいです。」
「……龍太、お前の彼女節操ねぇな。鳥肌がやべぇわ。」
「はぁ、まぁ、学校で隠してる分外だと出ちゃうみたいで。」
「慣れろ、誠。」
「慣れたのか?」
「まぁ、クラスにもいるから。」
「そりゃ、大変だな。」
誠はそう言って立上り、当たり前の様に蓮のコップも一緒に持ってドリンクバーへと行ってしまった。それを目敏く見つけた桜ちゃんは、蓮にぶっ込んだ。賢悟と気が合いそうだな。
「お2人も、付き合ってるんですか?」
「いや。何で?」
さらりと半分嘘を吐いた蓮に、春哉は小さく溜息を吐いた。俺は、今日で変わる事を期待する。
「自然だったんで、今の。」
「あぁ……世話好きだからな、そもそも。」
「でも、別の学校なのに仲良しですね。」
「俺のバイト先と、こいつの予備校が近いんだよ。」
「……あぁ、ありがとう。」
「ん。」
「あ、そうなんですかぁ。」
わぁ、凄い怪しんでる目ぇしてるぅ。
そんな桜ちゃんに気付いてるんだか、いないんだか。誠は黙々と昼飯の続きを始める。俺達も、店内の賑やかさに負けない位和気藹々と食事を進めた。
ともだちにシェアしよう!