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レッツ、夢の国後半戦

 昼飯も済ませ、休憩も済ませ、後半戦行くぜ。  朝の内に取っておいた優先パス。それらを消化していきますよー。つっても、絶叫系2つだけなんですけどね。  さて、1つめ。優先パスといえども半分しか進めなかった。考える事、皆同じって事だな。  「さて……おんぶとか、動き回るのはダメだな。」  引くが良い。そんな顔で、誠が割り箸を差し出す。いやぁ、役に立つわぁ。大人数で行く時やってみてよ。  「あ、私王様です!!」  あ。血の気が引くって、こういう事なんだね。  「じゃぁ……乗って、降りて、出るまで、4番さんが2番さんをエスコートして下さい。あ、こういう感じですよ。」  龍太の手を取り、桜ちゃんは自分の腰に龍太の手を回し体をぴたりとくっつけ自分も龍太の腰に腕を回した。本領発揮してるっていうか、もう欲望が全面に出てるな。  「さ、4番さんだーれだ。」  うわぁ、満面の笑みだー。  「俺。」  レンレンキター。これで春哉だったら、俺血の涙が出ると思う。いや、冗談でなくマジで。でも……誠だったら、これはこれでネタに出来るな。って事は、俺でも弟でも良いな。うん、春哉以外来い!!賢悟の為に!!  「2番さん、だーれだ。」  「……うわ。」  マコたんキター!!ありがとう神様!!賢悟の運の良さありがとう!!  誠が割り箸を凄い形相で集めて鞄に仕舞い、俺は携帯桜ちゃんはデジカメを用意した。  「龍太、お前後で覚えてろよ……。」  「何で俺なんですか。」  「お前の彼女だからだ。」  ふと思ったけど、時間の制限意味ねぇなこの指令……まぁ、良いか。面白いし。  蓮の手が誠の腰に触れて、誠も腕を蓮の腰に回す。長身の美形2人がやると、様になるな。桜ちゃん、シャッター音が凄い。  俺は1、2枚撮ってその場で賢悟に送ってやった。春哉はそれを横から覗いていて、「誠に怒られるよ?」と言われてしまった。ま、何とかなんだろ。何だかんだ許してくれるのが、誠の好きな所だ。  それに、他の客の視線が2人に集まっているが、俺達と一緒にいるので気にならないみたいだ。2人並んで柵というか、手摺というか、そんな所に寄り掛かり、桜ちゃんに撮影されるがままになっている。  ぴったりと寄り添い、我関せずと言った感じで誠は携帯を弄り蓮は俺と春哉と喋ってる。  「なぁ、あとどん位?」  「さぁ?」  「乗り場もまだ見えないね。」  「どしたん、マコちゃん。」  「腰がくすぐってぇ。」  憮然とした顔で言い放った言葉を、桜ちゃんが拾わないはずが無い。  「肩に手を置いても構いませんよ!!」  「……桜煩い。」  ナイス龍太。  「はっ……うわぁ、す、すいませーん……。」  デジカメで顔を隠してもなぁ。口元超ニヤけてるよ。  当のマコちゃん本人は、「肩のがマシだな。」とか言ってる。  「肩か?」  「あぁ。」  蓮は普通に腕を肩に回し、誠との距離がさらに狭くなった。  「……イケメンの顔が近い。」  「桜ちゃんが怖い。」  あ、俺と春哉の感想ね、これ。  「ごちそうさまです!!」  ここまで来て、誠が考えるのを放棄した様で。他の客から受ける視線を真正面から受け、ふっと笑って蓮の肩に頭を乗せたりしてる。客が全然違う事でざわつき始めてるよ。  「ふわぁっ!!最高です!!」  桜ちゃんのテンション、やべぇ。  列が進むたび、蓮は手馴れた様子で手を誠の背中に移動させ歩く様促したり、曲がる時もぶつからない様にしていて何かもう、もうっ!!ってなる。  やっと、乗り場に来るとさすがに桜ちゃんは自重して、合わせて蓮と誠も自重した。まぁさすがにね、事故はダメだしね。  じゃ、1個目行って来る。  ***  「ご苦労様でした!!最後に1枚お願いします!!」  アトラクションから脱出して、終わるかと思えばまさかの要求。カメラを構えた桜ちゃんの目の前に、蓮と誠。2人は顔を見合わせ、動いたのは同時。  シャッター音は、聞えなかった。  「……も、もう一回お願いしますー!!」  「金取るぞ。」  「いくらでも!!」  あの野郎共、マウストゥマウスしやがった。  「残念、時間切れだ。サービスし過ぎたな。」  「そうだな。」  「く、悔しいですー!!次は、春哉さんを狙います!!」  「か、勘弁して……。」  俺と弟、何も言えないナウです。  さて、2個目の絶叫系は水に落ちる系です。濡れない様にしないとね。つうか、マジでキスすると思わなかったぁ。何この2人。超怖い。イケメン怖い。  ***  「よし来た。」  2個目の半分程の場所。俺様王様誠様です。すげぇ顔して俺を見てるんだけど逃げたい。  「……番号なぁ……先に何させるか言うわ。実験体。」  「はい!!」  「あ、俺か。」  実験体て。良いのか、桜ちゃんと我が弟よ。  誠様が2人を動かして、龍太が背中から桜ちゃんを抱き締める様な格好にする。  「はい、これ。出るまでな。」  鬼畜だ。鬼畜がいる。そんなんしたら、俺の理性パーンする。つうか、巻き込もうとしてる感尋常じゃない。  「で、番号だな……1と2。2が前な。」  「……1、俺だ。」  「僕2。」  「……1を3にチェンジ願います王様!!」  俺?3だよ!!バカ!!マジでチェンジお願いします!!  「王様!!私からもお願いします!!」  桜ちゃんが加勢してくれた。多分、自分の欲望の為に。  「だがなぁ、ルールだしなぁ。」  「何でもするから!!」  「あっ、龍司の馬鹿っ!!」  あっ、と思った時には遅かった。にんまりと、凶悪な顔をした誠が俺の目の前にいた。割り箸を唇に当て、笑ってる。怖い。美麗怖い。その顔も遠慮無しに撮影してる桜ちゃんすげぇ。  「あぁあ……龍司、元気でな。」  「レンレン止めて。マジで。」  「無理だろ。」  春哉は黙って顔を両手で覆ってしまっている。王様誠様は、龍太と桜ちゃんと何か話している。列は進まない。  「よし、チェンジを認める。が、追加指令を下してやろう。」  ノリノリだ。王様ノリノリだ。  「まず、体勢は変えないし終わるまでってのも変えない。が、お前ら。出たら口同士でキスな。桜に撮影させるから。それと、列の最中は桜の要望に答える事。拒否は認めない。」  「ぐふっ……ナイス、フック……いてぇ……。」  腹に1発、春哉から頂きました。  「……龍司の馬鹿。」  うひぇー、恥ずかしがる春哉超可愛いー。コートの首元のモフモフに顔埋めてるぅ。  「すい、ません……。」  「馬鹿。」  「ふぁい。」  「……春哉、荷物邪魔だろ?貸せよ。」  「うん、ありがとう。」  「じゃ、開始な。」  春哉が俺の前に立って背を向けて、腕を少し上げている。その隙間に俺の腕を入れて、前で自分の両手で手を結ぶ。横から春哉の顔を見ると、むすっとしている可愛い。  「可愛い……春哉さんマジエンジェル。」  「桜、最悪な方の素が出てる。」  「あ、ホント?気を付けるね、ありがと龍君。」  「ん。」  あー、溺愛してんなアレ。それにしても、春哉のコートのモフモフ超気持ち良い。  「……龍司、邪魔。」  「モフモフがいい感じで。」  シャッター音がいくつか聞えるのは、多分誠と蓮も撮影してるからだろう。  「……誠……後でじっくりお話しようね。」  春哉の顔は、笑顔だけど目が笑ってない。強い。  「サービスしてやれよ、将来の弟と妹によ。」  誠の言葉に春哉は黙り、俺に体重を預けてきた。春哉の黒髪が、俺の頬に触れる。……ん?あれ?え、将来の弟と妹と思ってくれてるんですか。文句言わないって事はそうですか。そうでしたか。マジで俺の嫁最高だわ。  「はぁ……考えるの疲れた。好きにして。」  「気だるい春哉も好きぃ。」  黒髪にこれでもかと頬擦りをする。春哉は「はいはい、ありがとうねー。」と俺の腕を撫でてくれた。それを撮影する桜ちゃんと誠。マジ、この空間カオス。  桜ちゃんの要望は、殆ど無かった。ただくっついて、俺が春哉にほっぺた擦り付けてる姿を撮りたいとか、真正面からハグとかそんな感じのものばかりだった。弟は、何とも言えない顔で俺達を見てたけど。  そろそろ乗り場が見える頃、一旦俺は春哉から離れた。室内とはいえ、離れてしまえば少しひやりとする。春哉を抱き締め温かかったから、大分名残惜しい。  ***  「ご苦労様でした!!」  ジェットコースターって、何であんなに楽しいんだろうね。濡れてはないよ。何か、水のアーチの中に落ちた感じだった。寒かったけど、楽しいわぁ。絶叫系好きだなぁ。  ちょっとした現実逃避をしていたら、肩に誰かの手が乗った。見れば「まぁ、頑張れ。」って顔した蓮がいた。夢の国なのに。  「じゃ、お願いしまーす。」  元気。超元気桜ちゃん。  「……本当にやるの?」  「は?王様の命令だろ?俺達は自主的にやったんだ、お前らもやるべきだろ?」  「その理屈、全然分かんないよ。」  誠と春哉の会話を他所に、俺は弟に見るなと告げた。  「いや、見るだろ。」  「携帯片手に笑ってんじゃねぇよマジで。お前、それ、親父達に見せてみろ。その顔面にまた青痣作ってやるからな。」  「見せない見せない。」  くーっ、絶対見せる気だこいつ!!  「……ぃよしっ!!春哉!!」  「はいはい。」  出口といえども人はもうまばら。次のお客まであと少し。  春哉と向き合って、春哉の肩を掴んだ。桜ちゃんに「行きましゅ!!」と宣言して、春哉に顔を近付けた。噛んだとか言ってるけど、聞えませーん。  はー。いつも思うけど、まつ毛長い。ちょっと伏せて、覚悟決めてんのかな?その顔も素敵エロい。それから、むにっとした感触とシャッター音……って連写かよ!!いつ離れれば良いんですか!?  「はぁ……素晴らしい……待受けにしたい……。」  あ、もう良いかな。と思って離れてみれば、春哉の顔真っ赤。  「むぐっ!?んん!?」  「ちょっと、今の春哉見るのも撮るのもダメ!!」  「えー、何でですかー?」  「お顔が真っ赤だからです!!」  「……お前がそうしてる時点で、顔色戻るわけねぇだろ。窒息すんぞ。」  やだ、誠ったら。冷静だこと。  「ごめ痛いっ!!」  「……龍司。」  あ、ヤバイ。これ【俺】の方の春哉だ。  「ご、まじごめん。」  「龍司、辞世の句くらいは聞いてやるよ……。」  離れた瞬間、肩ぶん殴られちったよ。素の方だから、いつもより痛かったけど。あ。春哉の口元、コートのシワが移ってんなぁ。  「でも……どんな顔してても、春哉は可愛いねぇ。」  「ここまで頭お花畑なのか?こいつ。」  「いつもだよ、前原……誠、こいつどうすれば良いの?」  「とりあえず、シカトすんのが一番効くんじゃねぇの?蓮、行こうぜ。」  「桜、春哉さん行こう。」  「行くよ。」  「えー……いい感じの痴話喧嘩でしたよー?」  「そういうの良いから!!」  「ちょっ、シカトやめて!!」  「重い!!」  「だってさぁ、春哉の真っ赤な顔とか見られたくなかったんだよー許してよー。」  「分かった、分かったから降りて!!」  ゲラゲラ笑って、ずっと喋って。飽きる事なく笑って、お土産も買って。少しお茶をしていたら、そろそろ夜のパレードの場所取りが始まる時間になった。  つうか、蓮と誠キス以外何かした?あれ?してなくね?  「手洗い行って来る。」  「あっ、蓮待って!!俺も行く!!」  「……ん。」  2人でトイレ行って戻る最中、ちょろっと聞いてみた。  「何かした?結局。」  「……いや。」  「いやいや、自分達で勝手にするっつーから放っておいたのに何それ!!」  「今日は、いつも以上に口が回るな。」  「テンション最高潮!!違う!!お前達の事!!」  「……まぁ、もうちょっと暗くなってからかな。」  「……変態……。」  「……春哉や誠には劣るだろうが、俺も一応男だが?」  「やめて、無表情に拳握らないで。」  「まぁ、とにかく。帰りまでにはどうにかする。」  「そうか?」  それなら、俺はもう口挟まないけど。  3人と合流して、パレードは立ち見にして少し早めに出て夕飯を済ませようかという話しになった。え?心ちゃんと夏生さん?社長夫妻と水族館行くんだって。なんつうか、社長夫妻って良い人たちだよな。知り合いの子供とはいえ、従業員にしたり就職しちゃえよとか、心ちゃんだって従業員全員のアイドルで娘で孫みたいな扱いだし。春哉は、何だかんだ人に恵まれてるんだろうな。  「龍司?どうかした?」  「……いや、幸せだなぁって。」  「……そうだね。」  シャッター音が聞えた気がした。  ***  キラキラ光るパレードは、目がチカチカします。プリンセスもプリンスも外人さんカッケー。  桜ちゃんはこれでもかとパレードを撮影して、俺達兄弟と春哉は桜ちゃんのストッパー役。だって、前に行こうとしちゃうんだもん。だから、気付かなかった。  「なぁ。」  「あ?」  「改まってなんだけど。」  「んだよ。」  「俺と、ちゃんと付き合ってくれないか?」  「……は?」  「やる。」  「……うわ、何お前。どうしたの?何?この計画聞いて張り切ったの?」  「いや、渡すタイミング無かった。」  「……母親からお前がたまに働いてるって聞いたけど、これの為か?」  「まぁ……そうだな。小遣い貰っても、あんま使わないから余ったの込みだけど。」  「ふぅん……また、華奢な指環買ったなぁ。ペアか?」  「……む。」  「……ふはっ、マジか!!お前度胸あんな!!俺だぞ!?」  「お前だからな。」  「は……おぉ……まぁ、何だ……どうも、ありがとう。」  「で?」  「っ……宜しく、お願いします。」  っていう事件が俺達のずっと後ろの方で起こった事を!!  そして、それを目敏く見つけた桜ちゃんは、その場で涙を流し崩れ落ち泣きながら尋問したのは蓮でした。  「何で、何で動画をっ!!」  無表情でシカト。さすがだわ。桜ちゃん、泣きながらポカポカ叩いてもそいつに効果無いよ。  で、そのポカポカ蓮を叩いてる桜ちゃんを動画で撮ってるのが、俺の弟。  「我が弟ながら、気持ち悪いな。」  「桜の立ち位置が春哉さんだったら?」  「撮影するな。ごめん。」  で、後ろじゃ誠と春哉が指環談義してる。プレッシャー?やだなぁ、俺の春哉への愛はプライスレスだよ。……いや、うん。いつかはね、買おうと思ってるよ。うん。  「ふぅん、へぇ、へぇええええ。」  「春哉、今世紀最大で凄い顔だぞ。何か、龍司混じってるし。」  「誠が可愛く見えるなぁ。」  「……眼科にでも行って来いよ。」  はー、何これ。最高かよ。桜ちゃんマジ後ろ見て。そいつの無表情じゃなくて、後ろ見て欲しい。あ、あー、みぃちゃった。って顔してるぅ。  「もう、今日死んでも良いです……蓮さんありがとうございます……。」  「止めろ、俺の子供産んでからにしろ。」  「お前は何言っちゃてんのかな!?」  「あ、はーい。」  「待って!!お兄ちゃん保護者として今の会話の説明を求めるよ!!」  パレードは半分だけ見て、俺達は外に出た。近くのファミレスで夕飯を済ませる為だ。いやぁ、今日はマジで楽しかった。今度は、夏生さんと春哉と心ちゃんと来たいもんだ。

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