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第3話 池田屋③
「……ンンゥ、グゥ……ッ」
肉塊を咥えこんで緩やかに頭を前後させていた日本号が、口から唾液を滴らせて苦しげに呻いた。半勃ちの状態でも巨大であった肉塊は、日本号の口の中でさらに大きく膨れあがっているらしい。顔を傾けて奉仕を続けながら、日本号の両手は苦痛を紛らわせるように自らの股の間に潜り込んでいた。
「そら、しっかり濡らしておけよ」
「ンブッ、……ンゥンン、グ……ッ」
頭を掴んで前後され、吐き気を堪えるような呻きが漏れる。同時に日本号の尻が揺れ始めた。着物に隠されて見えなくとも小狐丸には分かった。日本号は片手で己の砲身を駆り立てながら、残る手でその奥にある菊座を弄っているのだ。
まさか、菊座の中にあの醜い摩羅を受け入れるつもりなのか。
「黒田の若様も、すっかり一人前の太夫になられたもんだ」
貶めるような大立の言葉に、小狐丸は日本号が武家の出であったことを察した。確かに日本号のあの見事な体格は、幼少の頃からそれなりの鍛錬をしていなければ得られるものではない。それに言葉遣いは乱暴だが、立ち居振る舞いや身ごなしにはどこか品があった。それなりの家の出自なのだろう。それが、どうしてこのような置屋に身を置くことになったのか――。
「そら、蕾の方様にしっかと見ていただきな」
大立は両手で日本号の頭を掴むと、反り返った怒張がよく見えるように、猛る凶器を日本号の口から引き出した。
「…………!」
思わず小狐丸は息を飲んだ。
それはゾッとするような巨物だった。赤黒い胴体に、血管が畝のように浮き出て、所々が瘤のように膨れている。長さがある割に寸詰まりに見えるのは、竿の中央が異様に太いせいだ。――小狐丸はこの凶器が持つ恐ろしさを容易に想像することができた。
やや先細りな先端はまるで切っ先のように、抵抗もなく肉の入り口に潜り込む。やがて深く押し込まれるにつれ、後孔は竿の太さに張り裂けそうになるだろう。抵抗してももう遅い。この巨漢に上から圧し掛かられて、押しのけることができるものはそういないはずだ。根元まで収められれば、腹が内側から破れるような心地を味わうことになる。
男でも女でも、あんな化け物のような逸物を身の内に収めることなど、到底できるとは思えなかった。
「喉の奥まで咥えさせてやるぞ、太夫」
頭を掴んだ大立の言葉に、日本号がぶるりと震えた。
股ぐらに潜り込ませていた両手を上げ、制止しようとするかのように大立の手を握った。その手が震えているのは恐怖のためだ。
苦痛をしっかりと予感させ、恐怖に震え上がらせてから、大立は抱えた頭を引き寄せた。
「ふッ!……ウ、ウッ、……ッ……オ、ッゴォ!」
反った巨砲が自然の摂理に逆らって、日本号の口の中に吸い込まれていく。半ばを残して喉奥に閊え一旦動きが止まった拍子に、日本号が苦悶するように大立の両手に爪を立てた。だがこれはまだ序の口だった。
「……ン、ゴォオ……オ!……オッ、ォボッ……!」
沼から気泡が湧き出るような呻きが発された。頭を左右に振って拒絶する日本号を、大立は嬲るような笑みを浮かべながらさらに引き寄せる。行き場のないはずの残り半分が、小刻みに揺れながら口の中に沈んでいく。顎が外れそうなほど口を開いた横顔が真っ赤に染まり、涙と涎と鼻水が止めどなく流れ落ちた。
「ンブゥウ……ッ!……ンッ!……おお、おッ、オゥッ……ッ!」
失神しかけては、怒張を抜いて蘇生され、息を吸いきる間もなく再び喉を塞がれる。生殺しという言葉さえ手緩く思える残酷な喉責めに、小狐丸は思わず目を逸らした。
拷問の如き責めを眺めながら、小狐丸は運命の皮肉を感じていた。
贅を凝らした部屋を与えられ、絢爛豪華な着物に身を包んでいても、日本号は金で身を売る女郎でしかない。そして己もまた、明神の化身よ『華狐』よと、言葉を飾り立てられたとしても、同じように誰かに嬲られるための存在であることに些かの違いもないのだ。
「本丸でぬしさまにお仕えするか、ここで下郎の慰み者になるか。そなたにはそのどちらかしかない」
伯父の囁く声を、水音混じりの呻き声が掻き消した。
喉を解放された日本号が畳の上に這いつくばって呻いていた。先程飲んだばかりの酒が滴っている。四つん這いになったその尻を、大立が掴んで着物を背中まで捲り上げた。
ゲェゲェと苦しげにえづいているのに構わず、大立は引き締まった尻肉を両手で左右に開いた。露わになった菊座を、巨大な太刀にも似た凶器が貫いた。
唾液が滴る口を大きく開いて、日本号が背を反らせて咆哮した。
「……ッォ、ゥォオオ、ッ……オオァアアア――ッ……ッ!」
小狐丸が恐れとともに想像したままの光景が、目の前に広がった。
大立は凶器の先端を肉の中にめり込ませると、逃げを打つ日本号の体を押さえつけ、後ろから容赦なく残りを押し込んでいく。もがこうが暴れようが、日本号には逃れようがない。憐れな獲物にできるのは、狂ったように喚き立てて、身を裂かれる苦痛を紛らわすことだけだった。
「ア、アア、……アァアァアガァ――ッ……ヒギィイ――!」
小狐丸が痛がって拒んだ張り型の、優に三倍近くもある。木の根のようなその怒張は、日本号の体を無惨に割り開き、尻穴を限界まで抉じ開けて深々と収められた。
「さぁ、よく見てもらいな。玄人の商売ってもんを」
全てを収めさせた大立が、ぐったりした日本号の体を抱え上げた。繋がったまま体を起こし、胡坐をかいた自身の膝の上に日本号を座らせる。先程小狐丸が日本号に取らされていたのと同じ、大股開きになって膝を跨ぐ姿だ。
日本号を背後から抱える大立は、帯を締めたままの日本号の着物を大きく左右に広げた。
「……すごい……」
我知らず、小狐丸は感嘆の声を漏らしていた。
着物の上からでも逞しく見えていた日本号の裸体は、前をはだけると一層見事だった。厚い胸板も引き締まって割れた腹も、女郎などというより歴戦の武者そのものだ。
そして、その肉体美もさることながら、小狐丸の目を引きつけたのはそれよりも下、ずっしりとした質量感のある日本号の局部だった。
日本号の肉茎は、この部屋で目にしたどの張り型よりも大きく立派だった。先端が槍の穂先のように大きく張り出した怒張は、同性ながら惚れ惚れするほどの偉容を示している。玉の袋もずっしりと重たげで、日本号が精力旺盛であることは明らかだった。
小狐丸を感嘆させたのは、その持ち物が立派だったばかりではない。尻の穴にあれほどの肉棒を呑み込みながら、日本号の逸物は苦痛に萎えるどころか、興奮を示して隆々と天を向いていたのだ。
「太夫。あんたが客をどうやってもてなすのか、お方様にお見せしな」
「う……」
力なく項垂れていた日本号が、その言葉に反応した。
両手を頭上に上げて背後の大立の首に縋ると、足裏を踏みしめて腰を揺らし始める。日本号の立派な肉槍が大きく揺れ、振れる玉袋の合間から大立の怒張が肉穴を出入りするのが見えた。
「……そうだ、あんたは花街一の太夫だ」
後ろから回った手が、背を反らして体を揺する日本号の乳首を摘まみ上げた。淡い肉粒はクリクリと弄られると見る間に膨れ上がり、太い指で弾かれると甘い鼻声を漏らした。
執拗に嬲られた乳首が充血して真っ赤に染まる頃には、日本号の腰の動きは更に大きくなり、揺れる先端からは蜜が零れ始めていた。
「ああぁ……イッちまう……もう、イッちまうよぉ……ッ」
切ない啜り泣きが日本号の口から漏れた。
「逝っちまいな。ブッ放していいぞ」
「ア、アッ!」
熟れた肉粒から手を放して、大立が日本号の屹立を握った。先走りの滑りを借りて大胆に扱き立てる。
切羽詰まった声とともに、日本号の動きが激しくなった。
「出る……あぁ、出ちまう!……俺の子種が、――ァア、アアアアアッ……!」
握り締めた大立の手の中から、白濁が勢いよく噴き上がった。
日本号は叫び、恍惚とした表情で動きを止めた。だが大立の手は止まず、最後の一滴まで搾り取るように日本号の牡を扱き続ける。
「……もう、やめて、くれ……」
鼻から力が抜けるような、弱々しい声が上がった。
放埒を迎えた日本号の屹立を、大立はなおも激しく扱き上げていた。小狐丸にも多少の覚えはあった。吐精した後の男根にいつまでも触れていると、腰の奥から砕けてしまいそうな感覚に襲われる。優しくそっと触れる分にはいいのだが、出尽くした後を絞るような激しい触れ方は苦痛なのだ。
だが大立は日本号の懇願を聞き入れようとはしなかった。敏感になっている先端の穴を指先で弄り、手の中に受け止めた液を竿に塗してなおも扱きあげる。
「おかしく、なっちまう……嫌だ、あぁ……おかしくなっちまうよ……」
日本号が泣き声をあげた。
身を庇うように屈めるのを許さず、大立は日本号の体を抱え直した。二人の見物客に痴態を見せつけるため、脱力した体を自分の胸に凭れさせて嬲り続ける。扱かれ続ける屹立の先からは、精液とは違う緩い粘液が漏れ始めていた。
日本号が甲高い鼻声を漏らした。
「嫌だぁ……は、あぁっ……そんなにされたら、潮吹いちまう、よぉッ……」
「若いお方様に、見せてやりな。ケツに突っ込まれて女汁吹く太夫の姿をよ」
「……嫌、だッ……や、めてくれッ……ひ、ぁぁッ……ッ!」
拒絶の言葉は、語尾が裏返った嬌声に変わった。大立の手がますます激しく日本号の屹立を扱きたてる。ぐちゅぐちゅと濡れた音が立ち、擦られ過ぎた肉棒からは湯気さえ立ちそうだった。
「アッ!」
嬲られ続けた日本号の精悍な顔が、ついに屈辱に歪んだ。
「……ぅあッ! ……ぁあああああッ……ッ!」
獣のような叫びと同時に、ビクビクと痙攣する砲身からは小水とも精液とも違う、半透明の緩い蜜が吹き上がった。
大立の手で扱かれるごとに、尽きるところを知らぬように、潮が際限なく吹きあがる。いったいどんな感覚に襲われているのか、一吹きするごとに日本号は身を捩り、悲鳴にも似た嬌声を上げた。
「あああぁ……、ああああぁ―ッ……嫌だ……ひぃやだぁああッ!」
つい先程まで小狐丸を責めていた手練れとは思えぬ哀れな声で、日本号が身も世もなく啼き叫ぶ。
だが化け物じみた剛直に貫かれ、嫌だと激しく拒みながらも、日本号が感じているのは明らかに苦痛だけではなかった。激しく潮を吹かせながら、身に余る快楽の波をなおも貪ろうと、日本号の腰は淫靡に揺れて大立の怒張に喰らいついていた。
大立がその大きな掌で、日本号の尻を強か打った。
「嫌もクソもあるか、この牝豚が! お前は死ぬまでここでケツ掘られる運命なんだよ!」
「もう嫌だ……あ、ああ、あ……イッちまう……メスイキす、るぅ……ッ!」
ついに崩れた日本号を、大立は畳の上に這わせた。そのまま獣の姿勢で後ろから激しく突き上げる。激しすぎる交合に肉襞が捲れ上がり、露出した珊瑚色の粘膜が小狐丸の目に映った。
「……小狐丸、そこに這いなさい」
背後から、命令というにはあまりにも静かな伯父の声が聞こえた。いつの間にか腕の縛めは解かれていた。
小狐丸は言われるままに手を突くと、菊座を差し出すように、伯父の前で足を開いて四つに這った。濡れた張り型の先端が、伯父の手で窄まった入り口に押し当てられた。
「息を吐いて、力を抜いておけ」
言葉が終わらぬうちに、精巧に作られた木製の男根が体内に入り込んできた。張り出した雁の部分が肉環を拡げて潜り込んでくる。
「ん、ッ……」
痛みはあった。
だがそれ以上に、未通の場所を異物に犯される感触が小狐丸の興奮を煽った。
これを握っているのは、日本号でもなければ顔も知らぬ主でもない。あの玲瓏な伯父が、白く美しい手に生々しい淫具を握って、今まさに小狐丸の体を破瓜しようとしているのだ。
「……伯父上……!」
下腹から駆け上ってくる切ない疼きに、小狐丸は慕う相手の名を呼んだ。伯父の手によって破瓜される。決して無垢のまま本丸へ納められるのではない。例え生身の肉体ではなくとも、小狐丸の純潔は恋焦がれる伯父の手によって散らされるのだ。
――昏い喜びが小狐丸の胸を占めた。
「あぁ……伯父上……伯父上……ッ、気持ちいいぃッ……腹が蕩けまするッ」
甘い悲鳴が自然と唇から迸っていた。
あれほど努力しながら、どうにも得られなかった快楽が、まるで奔流のように輿の奥から一気にきた。伯父の張り型に突かれるたびに、精とは違う緩い蜜が、身震いするほどの快感とともに鈴口から溢れ出ていく。深く深く波のように襲い来る、頭の中が真っ白に蕩けてしまいそうな幸福感。
「そう……それが姫逝きじゃ。よう覚えておけ……」
「あああぁッ……伯父上……ッ、小狐は……姫逝きします……ッ!」
満足げな伯父の言葉に促されるように、小狐丸は尻を奔放に揺さぶった。吐精とは違って、昇っても昇ってもこれには終わりがない。何度気をやっても波のように繰り返しやってくる悦楽に、小狐丸は尻の中の道具をきゅうきゅうと締め付けた。この硬く冷たい摩羅こそが、伯父の分身なのだと自らに言い聞かせて。
「……蕩ける……もう堪忍してくだされ、気持ちいぃ……また逝くぅ……ッ……」
何度も何度も頂に駆け上りながら、小狐丸は自ら進んで淫らに喘いだ。――責め立てるのが己の方で、あられもない言葉を発するのがこの美しい伯父の方だったらと、夢想しながら。
目の前では、岩のような大男が太夫を床に這わせて、激しく腰を打ち付けている。
「もう、勘弁してくれぇ……壊れちまう……俺のマンコが、バカになっちまうよぉッ!……ヒィッ、ヒィィッ!……」
悲し気に咽び泣く日本号の足の間は、零れ続ける悦びの蜜で薄く水溜まりができていた。武勇者のような姿をしていても、結局は一夜の欲望を売る女郎に過ぎないのだ。
その痴態を見るともなく見ながら、小狐丸は尻奥から湧き上がる悦びに身を任せて酔い痴れた。女郎に堕ちるのもさほど悪い話ではない。時折でも良いから愛しい伯父が来てくれて、己をこうして買ってくれるのであればと、そう思いながら――。
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