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恩返し
「 あ… 」
如何にも怪しげな男は俺の顔を見るなり手を離してキョトンッとした
いや,なぜ貴方が驚くんですか…
などと思ったが敢えて口にはしなかった
「あの…レインってこの子の事ですか?」
俺はそのままふわふわへと目線を下げる
つられて彼も目線を下げてふわふわを見るなりハッとした
「え、あー…そうそう。この子探してたんだよ」
彼がふわふわの頭を撫でながらそう言えば,ふわふわは嬉しそうに彼の手へと擦り寄った
どうやら本当に飼い主らしい…?
ふわふわはパタパタと嬉しそうに尻尾を横に振り彼の頬をぺろぺろと舐めていた
「ありがとうね,見つかってよかった」
彼はスっと立ち上がり多分…微笑んだ
なんと言うか……こう,雰囲気がフワッとなったのだ
「そんな…俺はただこの子に助けてもらったので恩返し的なものです…」
俺がポツっと小さく呟くと彼は首を傾げる
「この子が…?」
実際命を救われたとかそんな大袈裟な事ではないが,俺はこの子が居なければ混乱したままあの場から動けずに居たと思う。
そしたらきっとこんな不思議な所に1人で寂しさと不安で押し潰されて居たと思う
この子が居たから,不安が和らいだ。
寂しくなくなった
そう思うととても有難いことだと俺は思わざるを得なかった。
「この子が居てくれてよかったです…」
飼い主が見つかって,この子も元いた家に帰るんだろう
そしたら俺は1人…
再び不安と寂しさが込上がってきて暗い気持ちになる
多分俺はそれが顔に出てたんだと思う…
そしたら彼は……
「なんかよく分かんないけどさ,俺にとっては君がこの子を助けてくれたもんだから俺は君にお礼したいな……
良かったら一緒にご飯食べない?奢るよ」
なんて言ってくれた
そう言えば書庫整理していた時から何も食べてなくてお腹が空いている
今更そんな事に気が付いて恥ずかしくも俺は小さくコクッと頷いた
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