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知らない
俺は女の子に教えて貰った方向に走っていった
すると路地裏の中から声が聞こえてくる
レイラ…ッ
俺は何も考えず中に入っていく
誰も俺に気付いてない様子だったけど俺はピタッと動きを止める
俺がただの高校生だったらココに飛び込んでってコイツらを殴ってる…
俺はぐっと拳を握る
俺はそうしようとした瞬間に身体が止まってしまったんだ…
自分の仕事とレイラを天秤に掛けてしまってる
俺,やっぱり最低だ……
仕事の都合とか言い訳にならない言い訳で直ぐに飛び込むことが出来ない…なんて…
「その汚い手を離せ…」
するとそんな声が聞こえてきた
レイラの声だってすぐに分かった。
でも…とても低くてレイラの声なのにレイラの声じゃない気がした
「調子に乗ってるのはどっちだよ」
そう言ってレイラは倍もあるようなガタイのいい男までをも倒していった
俺はその姿に目を見開いて動くことが出来なくなった
そしてレイラが笑った事に気が付いた
その笑顔は殺意と狂気に満ち満ちていて…
知らない…こんなレイラ知らない…
俺は何故か足が竦んで何も出来なくなってしまう
このままじゃ本当に腕を折ってしまいそうなのに…
そうしてただ見てる事しか出来なかった俺と裏腹に,今まで興味無さげ煙草を蒸していた男が立ち上がりレイラの肩に手を乗せた
「連れが悪かったな,謝るから今回は見過ごしてくれやしないか」
「…」
2人は暫く見つめ合った後,レイラは手を離し距離を取る
それから男3人が「ごめんなさい」と情けない声を出しながら俺の方へ逃げる様に来た
俺の事をチラッと見ては逃げる様に去っていった
ただレイラを止めた男は俺の横を過ぎる時,
「何も出来なかったな,彼氏さん」
とだけ言って過ぎ去った
カァ…と情けなさで顔が熱くなる
俺は…
「大和……さん」
レイラも俺に気付いたのか俺の名前を呼んだ
けどその声は震えていて目線をやると怯えた顔をしていた
「いつから…」
「ごめん…割と初めから…」
俺の言葉に更に肩を震わせるレイラ
そうだよ…俺が知ってるのはこういうレイラだよ……
俺はいつの間にか動ける事ができるようになってレイラの側まで行き抱き締めた
「怖かった?」
俺が声を掛けるとレイラは俺の胸元でフルフルと小さく首を振る
「1人にしてごめんね?」
するとレイラはギューッと力強く抱き着いてくる
「レイラ?」
「俺の事…嫌いにならないですか?」
ならないよ…?
そうすぐには俺は何故か答えられなかった
正直あの時のレイラを思い出すと未だにゾッとする
俺の知らないレイラが居るみたいで凄く怖かった
「うん…」
俺は漸くしてやっと返事することが出来た
するとレイラは胸元から顔を上げて暫く俺の顔を見つめてくる
「黒髪…似合いませんね」
いきなりそんな事言い出すもんだからさっきまでの変な空気が一変した気がした
俺はクスッと思わず笑ってしまう
それからウィッグを外して「これでどう?」というとレイラは満足そうに頷いた
そしてこの行動が後々大きな騒ぎを引き起こした
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