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読めない
暫くして車が止まった
俺は大和さんに身体を完全に預けてしまっていたがゆっくりと身体を起こす
外を見ると一面コンクリートで車が沢山止まっている所だった
「行こうか,レイラ」
「はい…」
車のドアを開けて大和さんが先に降りると目の前でしゃがんできた
俺がキョトンっとしてると「おんぶしてあげる」と言うので俺はその背中に抱き着いた
「重くないですか…」
「軽いよ」
それ以上の会話もなく,後はひたすらに大和さんが男性の後ろを着いて階段を上がっていった
4階くらい上った所で廊下に出て奥へと進む
そして奥の部屋が自動ドアで拓くようになっていて中に入ると接待室の様になっていた
待合室…にも似た雰囲気だ
そこから更に奥へと進んでボタンを何個か押すスイッチのようなものが横についてるドアがあった
男性はそのボタンを何か8回くらい押していた
するのカチャッという音がして扉が開いた
俺達はその中へと入っていった
「お兄ちゃん…!!」
駆け寄ってきた女の子が大和さんの目の前まで来てそう呼んだ
大和さんの妹……?
先日俺に貸してくれたような猫の服にピンクのヒラヒラのミニスカートを履いたその子は俺と目が合うとキッと睨んできた
「大和…そこに座りなさい」
少し年老いたおじさんが大和さんの名前を呼び,自分が座っていたソファーと向かいのソファーを指差す
なんだか俺は怖くなってきてしまう…
俺は大和さんにソファーに下ろされる
大和さんもその横に一緒に座った
「初めまして,私は芸能事務所の社長を務める 山吹 鋳郎と言います。宜しくお願いします」
おじさんらしい低く落ち着きのある声で優しい目を俺に向けながら自己紹介をしてくれた
「あ……海屋 レイラと申します……」
俺はそれに応えて名を名乗ると大和さんの妹らしき人が目を丸くしていた
「ふむ…レイラさんか……さてと,早速だが,君にここに来てもらったのには理由があってね…本題へと入らせてもらおうか…」
俺は不安になりチラツと大和さんの顔を見る
大和さんは真剣に山吹さんの顔を見詰めているだけだった
「まずはね…君にこれを見てほしい」
そう言って渡されたのは1つの本だった
普通の本とは違って紙がつるつるしていて薄い冊子のようなものだったけど
俺はそれを手に取り1ページずつページをめくっていく
勿論文字が読めないのでなんと書いてるか全く分からない
けど,すぐに何を見てほしいのかが分かった
数ページ捲るとそこにはデカデカと俺と大和さんが抱き合っている写真が貼り出されていた
これが何を意味するのか分からないけど驚きと恥ずかしさ,恐怖が俺の中に渦巻いた
「読めたかね?」
山吹さんの言葉に俺は何の反応も出来なかった
俺が黙り込んでいると大和さんが心配そうに俺の顔を覗き込んできた
「文字が……読めません…」
俺はここで初めてその事を打ち明けた
大和さん含めここにいる全員が驚いた顔をした
「けど…良くないこと……なのかな,とは何となく雰囲気でわかりました」
室内がシーンっと静まり返った
俺は変なことを言ってしまっただろうか……
「大和くん…」
皆が唖然としているなか最初に口を開いたのは雪田さんという男性だった
名前を呼ばれただけなのに大和さんは何が言いたいのかすぐに感じ取ったのかゆっくりと首を横に振る
「レイラは日本語がペラペラだからてっきり……
ここに書かれてること何も理解できないって事だよ……ね?」
俺はコクっと小さく頷いた
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