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第14話

 実家に戻り、晴斗は自分の部屋に青年を案内した。 「お腹空いてないか? 今お茶とお菓子持ってくるからな」  緑茶のペットボトルを冷蔵庫から出し、空いているグラスを二つ持って戻る。折り畳み式の簡易テーブルを部屋の真ん中に設置し、冷たいお茶に煎餅を併せて、九尾に出してあげた。 「ほらよ。よかったら食べてくれ」 「…………」  けれど九尾はチラリとこちらを見ただけで、側に寄ってきてはくれなかった。部屋の隅に座り込み、ぼんやりと窓の外を眺めている。やはり晴斗と九尾との間には、明らかな壁があるようだ。  ――まあ、そう簡単に親しくはなれないよな……。  九尾は妖怪だ。人間ではない。初対面の晴斗におとなしくついてきてくれただけでも、今日のところは万々歳かもしれない。  仕方がないので、晴斗はお茶を飲みながらスマートフォンを手に取った。そしてネットで『キツネ』について調べてみた。妖怪といえど、キツネはキツネである。今のうちに基本的な特徴は掴んでおきたかった。『九尾の狐』についても調べてみたが、真偽のほどが定かではなかったので、「これは意味がない」と思って途中でやめた。  ――へー……キツネって、ネコ目イヌ科の哺乳類なのか……。  まとめるとキツネ属……ということらしいが、これだけでも随分オイシイ生き物だということがわかる。決して猫と犬が合体しているわけではないが、上品な顔つきといいフサフサの毛並みといい、可愛いことには変わりない。ペットとして人気だという「フェネック」とやらは鼻血モノの可愛さだった。  ただ、キツネは犬や猫と違って愛情込めて世話をしてもなかなか人間に懐かないらしいが。  ――九尾も、人間にはあまり懐かないタイプなのかな。  妖狐の場合はある程度コミュニケーションが取れるから、やり方次第でいくらでも仲良くできそうだが……。

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