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第21話
夕方近くになったら、いつもの夏らしい陽気に戻ってきた。
晴斗は九尾を連れて、再び外に出た。京都の夏は暑い。早朝か夕方にならないと出歩く気になれないから、ちょうどよかった。
「九尾……耳と尻尾、引っ込められたのか」
外出する際、九尾は「人目が気になる」と言ってキツネのシンボルを隠してしまった。確かにそのままでは目立ちすぎるけれど、せっかくの美しい毛並みを拝めなくなって少々残念に思った。
九尾は淡々と答えた。
「妖狐も成人すると、耳と尻尾の出し入れができるようになるんだ。個人的には露出していた方が楽だけど、人の多いところに行く時は目立っちゃいけないと教わった」
「ふーん……まあ、それもそうだな。でも家では出しっ放しでいいからな? 俺もそっちの方が嬉しいし」
「……そのつもりだけど、今度勝手に耳や尻尾に触ったら呪詛 をかけるぞ」
「そんな怖いこと言うなよ。もう触らないって」
そう言いながら晴斗は、耳を揉んだ時の九尾の反応を思い出していた。こういうのもなんだが、すごく色っぽくて可愛い反応だった。男の自分でもぞくぞくしてしまった。あれっきりになってしまうのは実にもったいない。もう少し仲良くなったら、様子を窺いつついろいろ探ってみよう。心が解れてきたら、今よりもっとイイ顔が見られるかもしれない。
――綺麗で上品な人がああいう風に乱れると、めっちゃソソられるしな……。
ちょっとニヤニヤしていたら、九尾に変な目で見られたので慌てて真顔に戻した。
晴斗はまず大手ブティックチェーン店に向かった。耳と尻尾は引っ込められても、服装はどうにもならない。背丈は晴斗とさほど変わらないが、自分の服を貸すより、九尾専用の服をきちんと見繕った方がいいだろう。
「九尾、美人だからなんでも似合いそうだな。いろいろ着せたくなってくる」
「……私は着せ替え人形ではないぞ」
「まあまあ。着られる服が多いのはいいことだろ?」
晴斗は半袖のシャツとボトムスを適当に選び、それを購入して九尾を試着室に押し込んだ。
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