22 / 134
第22話
「はい、じゃあこれに着替えてくれ」
「……いいけど、この服を捨てるのは嫌だ」
「捨てないって。それは大事にとっておこう。というわけで、ササッと着替えてくれよ。俺、この辺で待ってるから」
そう言って、晴斗は試着室付近をうろうろしながら九尾を待った。
だが数分後、カーテンの隙間から九尾が顔だけ出してきて、遠慮がちに声をかけてきた。
「……晴斗、ちょっといいか?」
「あ、着替え終わったのか?」
「いや、その……。着替えたいのはやまやまなんだが、服の作法がよくわからなくて」
「? 洋服に作法なんてないけど……」
和服じゃあるまいし……と思って試着室に入った途端、目を剥いてしまった。
「この服なんだが、そのまま穿いていいんだろうか……? なんだか締め付けられているような感じがするんだが……」
首をかしげながら水色のボトムスを差し出してくる九尾は、一糸纏わぬ……いわゆる素っ裸の状態であった。下着の類さえも身に着けておらず、大事な部分が丸見えになっている。男性器そのものは人間と同じ形をしているが、大人らしい体毛がほとんどないのは何故だろう。もともとの体質だろうか。個人的には、あまり毛深いタイプは好きじゃないから、体毛が薄い人は大歓迎だけど……。
「……晴斗?」
「ハッ!?」
またもやおかしな方向に考えが及びかけ、晴斗はぶんぶんと頭を振った。これ以上見ていたら、また変なことを考えてしまいそうだ。
「ええと……悪い、なんだっけ?」
「いや、だからこの服なんだが……」
「それは下に穿く衣服だよ。ほら、俺のズボンみたいにさ」
「それはわかるが、直接穿いていいんだろうか?」
「直接は……かなりの少数派かもな。ていうか九尾、なんでパンツ穿いてないんだよ?」
「……ぱんつ?」
「あー……いや、なんでもない。聞いた俺が間違ってた」
平安時代には、パンツなどという気の利いた下着は存在しないのだろう。それなら知らなくても仕方ない。
ともだちにシェアしよう!