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第31話

「ど、どこ触っているんだ! 放せっ!」 「ちょっとだけ! ちょっとだけだから、な? 減るもんじゃないし、いいだろ?」 「そういう問題じゃ……あっ、あっ、やめて……」  口では拒否しながらも、声には艶っぽさが混じっている。晴斗を引き剥がそうと肩に手をかけてくるが、耳を揉まれて気持ちいいせいか、力が入っていなかった。狭い風呂の中では逃げようにも逃げられず、上体を反らして顔を背けるのが精一杯のようだった。  ――ああもう、マジで可愛い……!  男から見ても、ぞくぞくするほどの色気がある。普段は品のいい綺麗な男性がこうして嬌態を晒す様は絶品だ。セクシー女優のDVDなんかより遥かに興奮する。鼻血が出そうだ。 「や、やめ……ホントにだめ……これ以上触ったら……っ」  整った美貌を歪ませ、切羽詰まった声を上げる九尾。その声にも興奮してしまって、晴斗はクィッと耳を捻りあげた。 「っ! あっ……ああっ!」  がくん、と身体を跳ねさせ、九尾はぐったりとバスタブにもたれかかった。  あり? と思っていたら、水面に不透明な白い液体が浮かんできた。  それを見た瞬間、晴斗は一気に現実に引き戻された。  ――いやいや、嘘だろ……?  ただの悪戯のつもりだったのに、耳を揉んだだけでイってしまったのか? 九尾がこんなにいやらしい身体をしていたなんて、いろんな意味で衝撃なんだけど……! 「はあ……はあ……」  一方の九尾も、かなりショックを受けているようだった。胸をせわしなく上下させ、今にも泣き出しそうになっている。 「あー……その……」  何を言えばいいかわからなくなり、晴斗は素直に思ったことを口にした。 「……九尾、反応めっちゃ早いな」 「っ――……!」  九尾は見ていられないほど真っ赤になり、汚れたお湯をぶっかけてきた。

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