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第87話

「大丈夫だ、九尾……俺が側にいる。お前のこと、絶対守ってやるから。だからお前は、何も心配する必要ないんだよ」 「っ……」 「大丈夫だからな、九尾……」  奥歯をカチカチ鳴らし、震えている九尾。その背中を撫でつつ、深呼吸するよう促す。  辛抱強くそれを繰り返していたら、やがて九尾の震えが治まってきた。耳もゆるゆると立ち上がり、尻尾もいつもの状態に戻り始める。 「……ありがとう、晴斗。もう大丈夫だ……心配かけてすまない」  やんわりと腕を解き、こちらに微笑みかけて来る。表情はまだ硬かったが、顔色はいつもと同じくらいにまで回復していた。  晴斗は彼の手を握りながら、聞いた。 「九尾が封印された時も、こんな感じだったのか?」 「……ああ。いつも通り晴明の屋敷にいたら、数人の男が押し寄せて来て……いきなり私を殺そうとしてきたから、晴明がこっそり裏口から逃がしてくれたんだ。だが、人間たちに見つかる度に矢を射られたり、刀で切り付けられたりして……さんざん追いかけ回されて最終的にあの山に逃げ込んだんだが、そしたら……」  晴明に裏切られて、封印されてしまったのだ。 「……いや、もういいよ。それ以上は言わなくていい」 「…………」 「それよか、これからどうする? 出口を探したいのはやまやまだけど、この状況じゃ歩き回るのは難しいぞ」  テレビ局というのは、容易く電波ジャックされないよう、フロアの構造がかなり複雑になっている。階段もストレートに上の階に繋がっていないし、もちろんフロアマップも貼られていない。侵入者対策としては効果的かもしれないが、初めてここに来た晴斗にとっては建物全体が迷路そのもので、どこに何があるのかさっぱりわからなかった。

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