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第121話
卵の天ぷらを振る舞うのはいいが、今度は別の疑問が湧いてきた。
「お前、いつになったらタヌキ少年に戻れるんだ?」
「さあね? そのうち元に戻ると思うけど。今は平和な時代だし、そんなに心配してないよ」
「そうか……。じゃあ尻尾も、そのうち生えてくるんだな?」
軽い気持ちでそう言ったら、三尾がギロリと睨んできた。明らかにムッとしていた。
「トカゲじゃないんだよ。そんなのニョキニョキ生えてくるわけないでしょ。一度潰れた尻尾は元には戻りません」
「えっ……?」
「だから嫌だったんだよ、あんたなんかに尻尾を使ってあげるの。痛いし、疲れるし、その後なかなか元に戻れないし……ホント、どうしてくれるのさ」
再びぷんぷん怒り出した三尾を見て、九尾は形のいい眉尻を下げた。
「ああ……三尾、本当にすまない。私のせいで、大事な尻尾を二本も失くしてしまって……」
「ん? 九尾ちゃんはいいんだよ。玉藻前に呪詛かけられてたし……脅されて仕方なく飛び降りたんだもんね。自発的に飛び降りた晴斗とは違うし」
「だけど……やっぱり申し訳ないよ。私の尻尾を分けてあげられればいいんだが……」
「あはは……九尾ちゃんって、本当に優しくて純粋だよね。そんなに素直じゃ、悪い人間に騙されちゃうよ?」
「え? どういう意味だ?」
「いや、その……実は妖怪の尻尾って、抜けても少しずつ生えるようになってるんだよね。完璧に治るのに十年くらいかかるけどさ」
「えっ、そうなのか!? 私は尻尾が抜けたことないから知らなかった……」
「あはは……ごめんね、嘘ついて。どっかの誰かさんが『どうせ元に戻るんだろ?』的なノリで聞いてくるもんだから、ついムカついちゃって」
……そう言われると、ちょっと罪悪感が芽生えてくる。
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