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第122話
三尾はぴょんと九尾の腕から飛び出すと、とことこと晴斗の元へ寄ってきた。
「じゃ、僕は夜まで出かけてくるからね。温泉卵の天ぷら、ちゃんと用意しといてよ? 晩御飯に食べるから。あと、僕用の布団も用意しておくように」
「……は? まさかお前、俺の家に泊まり込むつもりか?」
「それくらいしてもバチは当たらないでしょ。本来なら即死のところを、半死半生の状態で助けてあげたんだから。僕だってたまには、ちゃんとした布団で寝たいんだよ」
「それは、まあ……でも、ずっと居座られるのもちょっと、なんつーか……」
チラッと九尾に目をやったら、三尾はあからさまな溜息をついた。
「はいはい、わかってますよ。そういう時は空気読みますから。あ~……ヤダヤダ」
「……いって!」
八つ当たりのように腕に噛みつかれ、晴斗は痛みに飛び上がった。意外と容赦なく噛みつかれた。生々しい歯型が残ってしまった。
「じゃあね、九尾ちゃん! また後で~!」
三尾は残った尻尾で器用にベランダの窓を開け、そこからどこかへ走り去ってしまった。
「ったく……ひねくれてなければ、アイツも可愛いのに」
「三尾はあれでいいと思う。とてもたくましくて……私からすれば羨ましいくらいだ」
「……ま、たくましいっていうのは当たってるけどな」
鍵をかけずにベランダの窓を閉め、晴斗は九尾に向き直った。
「それより九尾、身体の具合はどうだ? 何か変なところはないか? お前、呪詛かけられてただろ?」
「いや、大丈夫だ。何もおかしなところはない」
「ならいいけどな。じゃあ、ひとまずお茶でも飲んで一息つこうか」
と、キッチンに行きかけたのだが、ガシッと腕を掴まれて、九尾の尻尾の上に転倒してしまった。
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