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風呂場で 1

リョウに手を引かれて入ったバスルームは、さすがにこういう場所だけあって、洗い場も浴槽も広かった。 マットの上に前後に二つ並べて置かれたプラスチックの椅子のうち、前の方に座らされると、リョウは浴槽から湯をすくって、ナオトに丁寧にかけ湯をしてくれた。 浴槽の湯は、白く濁って甘い良い香りがしている。 どうやら店名にちなんでバニラの入浴剤が入れられているようだ。 「ボディーソープは持ってこられなかったので、こちらに備え付けのもので申し訳ありません」 そう言いながら、リョウは店から持ってきたカゴから出した新品のスポンジにボディーソープをたっぷりつけて泡立てた。 「失礼します」 声をかけられると同時に、ナオトのすぐ前の床に膝をついたリョウに右手を取られた。 よく泡立てられたふわふわのボディーソープの泡で指を一本ずつ丁寧に洗われると、照れくさいようなむずがゆい心持ちになる。 そのまま、腕の先から腕の付け根に向かって洗われた。 腕の外側を洗われるぶんには問題はなかったが、内側の皮膚の薄いところ、特に脇の下辺りを洗われるとさすがにくすぐったくて、びくっとしてしまう。 「すみません」 そう言うとリョウはさっと脇の下からスポンジを外してくれた。 そうして今度は左手を取って、右手と同じように指の先から腕の付け根まで丁寧に洗ってくれたが、さっき右の時に反応してしまった脇の下あたりは洗ってくれなかった。 その心遣いはありがたったが、洗い残しがあるのがちょっと気持ち悪い感じがする。 「背中洗いますね」 そう言うとリョウは立ち上がってナオトの後ろの椅子に座り、背中を洗い始めた。 首から順番に下の方へと手際よく洗っていくその手つきは、力加減が丁度いいこともあって気持ちがよい。 いつまでもそうして洗い続けていて欲しいくらいだったけど、残念なことにさして広くもない背中はあっという間に洗い終わってしまった。

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