17 / 22

全部洗って☆

「……はい、洗って、ください……」 勇気を振り絞ってそう答えると、リョウは「うん」とうなずいた。 「大丈夫、痛くないように優しくするからね」 そう言いながらリョウは近くに置いてあったカゴからチューブを取り出した。 「俺にもたれてくれていいから、力抜いてて」 ナオトがうなずいて左側にいるリョウの胸に軽くもたれかかると、リョウの指がナオトのつぼみに触れた。 ゆっくりと入ってくる指は、チューブの中身が塗ってあるのか、ぬるぬるしたもので濡れているようだ。 そのせいか指を入れられても、違和感はあるけれども痛みはなかった。 そのままリョウの指は、ナオトの中を探るようにゆっくりと動く。 「…あっ……」 リョウの指がある一点をかすめた時、明らかに他とは違う感じがして、ナオトは小さく声を上げた。 「ん? ここがいいの?」 リョウの指が再び同じ箇所を擦った途端、はっきりとした快感を感じて、ナオトは甲高い喘ぎ声を上げてしまった。 「って、聞くまでもなかったね」 「す、すみません……」 真っ赤になってナオトが謝ると、リョウは空いている手でナオトの頭を軽くぽんぽんと叩いた。 「いいよ。  っていうか、声は出してもらった方が嬉しいかな」 「……はい、分かりました」 リョウにそう言われて、ナオトは声を我慢するのをやめた。 中の感じるところやその周りをリョウの指でいじられ、唇からは恥ずかしいくらいの喘ぎ声がひっきりなしにもれる。 気付けばナオトの中の指は本数が増えていた。 2本……いや、もしかしたらもう3本くらい入っているのかもしれない。 そう自覚した途端、ナオトはかっと体が熱くなるのを感じる。 「ねえ、ナオト」 少しかすれて艶っぽさを増した声で呼ばれ、ナオトはリョウの方に顔を向けた。 快感のせいでぼんやりした頭で、やっぱりかっこいいな、などと関係のないことを考える。 「ここ、もっと奥まで洗って欲しくない?」 ここ、と言いながら中に入れられた指を少しだけ動かされ、また快感に流されそうになりながらも、ナオトはどうにかリョウの言葉を聞き取っていた。 「……おく?」 反射的に聞き返すと、リョウは「そう」とうなずくと、ナオトの手を取っていきなりリョウ自身の股間へと持っていった。 「えっ……!」 握らされたリョウのものは、固くて熱かった。 ナオトの体を触ることでリョウもこんなふうに興奮してくれていたんだと思うと、ナオトは胸が熱くなる。 「これで、中、洗って欲しくない?  これだったら、指では届かないような奥の奥まで洗ってあげられるよ?」 「?……あっ」 そこまで言われてようやく、ナオトはリョウが言いたいことを理解した。 言葉では『洗う』とは言っているものの、それはもう、まぎれもないセックスだ。 ナオトの側からしたら、当然洗って欲しいに決まっている。 少し怖くはあるけれども、指でこれだけ気持ちいいのだから、リョウの大きなもので中を擦られたらどんなにか気持ちいいだろう。 それに何よりも、例え一度きりでも好きな人と体を繋げられるのなら、こんなに幸せなことはないと思う。 けれども、リョウの方はどうなのだろうか。 こんなに興奮しているものをどうにかしたいという欲求は男としてよく分かるけれど、ただの客相手にそんなことをしてしまっていいのだろうか。 確か最初に見せてもらった店の規約では、本番行為は禁止だったはずだ。 もちろんナオトはわざわざ店にバラしたりするつもりはないが、それでも大丈夫なのかと心配になってしまう。 「リョウさんは……」 「ん?」 「リョウさんは、僕のこと洗いたいですか……?」 驚いたように目を見開いたリョウの顔を見て、ナオトは自分が言うべき言葉を間違ったことに気付く。 「ちがっ……、そうじゃなくて……」 聞くのなら、洗っても大丈夫なのかと聞くべきなのだ。 洗いたいか、なんて言い方では、まるでリョウのナオトに対する気持ちを聞いているようではないか。 「……うん、洗いたいよ」 早く言い直さなければとあわあわしているナオトの耳に、思いの外真剣な声が届く。 「ナオトのこと、体の奥の奥まで、全部俺ので洗いたい」 そう言ったリョウの表情にはさっきまでのような、からかったり意地悪したりするような気配は見えなかった。 それだけでなく、その瞳には獣じみた情欲すら浮かんでいるように見える。 「……ナオトは?」 そう聞き返されて、ナオトはもう迷わなかった。 「僕も、洗って欲しいです。  僕のこと、リョウさんので、全部洗ってください」

ともだちにシェアしよう!