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番外編:その翌日のこと
浴室から連れ出されて、あっという間にベッドに押し倒され、そのまま二回戦に突入してしまった。
一回目以上に様々な技巧を尽くされて二回もイッてしまい、快感の余韻と疲労でふらふらになっているところをうまく誘導されて、ナオトの方もリョウが好きだと白状させられた。
ナオトの告白に大喜びしたリョウに三回戦を挑まれ、そのまま流されてしまい、それが終わってようやく気絶するように眠りに落ちた時にはすでに明け方になっていた。
おかげで翌朝、というか昼近くになってようやく目覚めた時も、まだあちこちが痛くて、体に力も入らないような状態だった。
リョウの手を借りて彼に借りた服に着替え、何とかダイニングまで移動した。
そうしてリョウが作ってくれた朝食兼昼食を食べながら、初心者相手に立て続けに3回も抱くような無茶をする男に告白するなんて、ちょっと早まったかもしれないとぼんやりと考える。
それでも隣でやたらと楽しそうにナオトの世話を焼いてくれるリョウを見ていると、昨日の無茶も愛ゆえだと感じられて、うれしくて顔がにやけてしまう。
「ナオトって土日休みでいいんだよね?」
リョウに聞かれて、ナオトはうなずく。
「じゃあ、今日明日はこのまま一緒にいられるね。
夕べちょっと無理させちゃったし、今日はのんびりしようか」
「あの……リョウさんの方はお仕事いいんですか?
たぶん平日より土日の方が忙しいですよね。
もしかしたら、また指名が入ってたりするんじゃ……」
本音を言えば、こうして思いが通じ合った以上、仕事とはいえ自分以外の人とお風呂に入って欲しくはない。
けれどもナオトも社会人である以上、そういうわけにもいかないことは分かっている。
だから断腸の思いでそう言ったのだが、リョウの方はナオトの言葉を聞いてぽかんとした顔になった。
「あ、そうか。
まだ言ってなかったっけ。
あのね、俺、あの店のキャストじゃなくてオーナーなんだよ」
「ええ?」
最初に店に行った時、リョウは制服を着て受付カウンターに座っていたし、ホテルで受けたサービスも完璧だったから、店員だと思い込んでいて、まさかオーナーだとは思いもしなかった。
「ま、オーナーって言っても友達と二人で共同だし、オーナー自ら受付やらなきゃいけないくらいだから、大したことはないんだけどね」
「それでもすごいです……」
ナオトとそんなに年も変わらないのにと、ナオトが素直な尊敬の眼差しを向けると、リョウは照れくさそうになった。
「前はホストやってたんだけど、そろそろ独立って話になった時に、どうせならホストクラブじゃなくて、趣味と実益を兼ねて好きな店をやろうって思ったんだよね。
まあ、キャストが集まるまでは俺もサービスしてたけど、そもそもお客さんは女の子だけだし、店始めたら忙しくて恋人作る暇もなかったから、ナオトが店に来てくれるまでは趣味の方は満たされていなかったわけだけど」
色んな情報を一度に聞かされて混乱するが、要するにリョウは元ホストで今はあの店のオーナーだけどお客さんにサービスはしてなくて、ついでにゲイで、ここしばらくは恋人がいなかったということだ。
それは思っていたよりはずっとナオトにとっていい状況で、ほっとして自然に頬が緩んでしまう。
「とにかく、そういうわけで休みは結構融通が利くんだよ。
昨日ナオトから電話もらってすぐ、もう一人のオーナーの奴と交渉して日曜日の夕方までは休みにしてもらったから、それまでは大丈夫だからね。
ところでさ……」
そう言うとリョウはふいにナオトの肩を抱き寄せ、耳元で囁いた。
「俺の恋人は、いつになったらその敬語をやめてくれるのかな?」
「こ、恋人……?」
驚いて反射的にそう言うと、リョウはナオトからぱっと離れた。
慌ててその顔を見ると、さっきまでとはうって変わって明らかに不機嫌そうになっていた。
「ふーん、ナオトはまだ、俺の恋人だって自覚なかったんだ。
夕べお互いに好きだって言い合って、あんなに情熱的に愛を確かめ合ったのに、そう思ってたのは俺の方だけだったんだ」
「あ、あの、その……」
恋人だと自覚していなかったのは確かだ。
けれどそれはナオトが恋愛に慣れていないのと、夢のような急展開について行けてなかっただけで、たぶんリョウが考えてるような理由からではない。
なんとか弁解しなければと、ナオトがあわあわしていると、リョウがふいに立ち上がって、ナオトも手を引っ張って立たせた。
「仕方ないね。
自覚してないのなら、自覚できるまでたっぷり体で分からせてあげるよ。
さ、もう一度ベッドに行こうか。
それともお風呂の方がいい?」
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