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リョウとつきあい始めて改めて知ったのだが、彼は本当にお風呂が好きだ。 一人で入るのも好きだが、恋人(ナオトのことだ)と入るのはもっと好きらしい。 正直ナオトはリョウが好きなのはお風呂でエッチなことをすることだと思っていたのだが、ただ一緒にお風呂に入るだけというのも相当好きらしい。 リョウが一緒にお風呂に入りたがるので、平日リョウが休みになった日などは、仕事終わりにリョウの部屋に行って、エッチはなしで一緒にお風呂だけ入って同じベッドで眠って、翌朝リョウの部屋から出勤したりする。 いったんスイッチが入ると絶倫というほかないリョウだが、普段はそれだけでも十分満足できるらしい。 ナオトの方もリョウとするのは決して嫌ではないのだが、何しろ激しすぎて会うたびに抱かれるのはつらいものがあるので、そうしてもらえるのはありがたい。 それにナオト自身もリョウとお風呂に入ることがすっかり好きになっていたので、誘われれば平日でもちょくちょくリョウの部屋に行くようになっていた。 今日も週の真ん中だったので、仕事終わりに外で待ち合わせて食事をしてからリョウの部屋に来た。 来るなり早々に浴室に押し込まれ、今はリョウに髪を洗われている。 リョウはどちらかと言えば、洗ってもらうより洗ってあげる方が楽しいらしい。 ナオトの方はと言えば、リョウの背中を洗ってあげたりするのも楽しいけど、リョウに洗ってもらう心地よさに勝るものはないと思っているので、お互いにそれで丁度良かったと思う。 リョウは髪を洗うのもうまい。 ナオトがいつも行っている床屋よりも、断然気持ちいいと思う。 けれどもその気持ちよさは、時折ナオトを不安にさせる。 「……他の人の髪も、こんなふうに洗ったの?」 今日はたまたま仕事でトラブルがあって、ちょっと疲れていたせいだろうか。 気が付くとナオトは、今まで決して口に出さなかったその不安を口にしていた。 「わ、ごめん!  今のなし!」 リョウみたいにかっこいい人が、今まで誰ともつきあったことがないなんてありえないと分かっている。 たとえリョウが今まで何人の人とつきあってきたとしても、今はナオトとつきあってくれていて、ナオトを好きでいてくれると感じさせてくれるのだから、過去のことを不安に思ったり不満に思ったりしてはいけないと、ナオトにも分かっている。 だから慌てて取り消したのに、なぜかリョウはナオトのことを後ろから抱きしめてきた。 「嫉妬してくれたんだ?」 ちょっとからかうような声音は、しかし妙にうれしそうだ。 「う、うん……」 それを認めるのは恥ずかしかったけど、リョウがうれしそうなのに後押しされて、ナオトはうなずいた。 「そりゃ、他にいなかったとは言わないけどね。  でも今はナオトだけだって、ちゃんと分かってくれてるよね?」 そう言われてナオトが何度もうなずくと、リョウは「よしよし」とナオトの頭を撫で、そのまま体を離して再びナオトの頭を洗い始めた。 「確かに今まで付き合ってきた人も、こんなふうに洗ってきたけどさ。  俺、この顔のせいでクールに見られるらしくって、こんなふうにべたべたしたがると『思ってたのと違う』って引かれることが多いんだよね」 「ああ……」 納得してしまうのは悪いとは思うけど、確かにナオト自身も実際にリョウとつきあい出して、最初のイメージとは違うなと思うことが多い。 ナオトの場合は、むしろ良い方にイメージが裏切られたので良かったと思っているが。 「ナオトみたいに、おとなしくて素直なタイプの子とつきあったこともあるんだけど、そうすると『やっぱりもっと普通の人とつきあう』って振られたりしてね」 申し訳ないけれど、それも分かると思ってしまった。 ナオト自身も正直リョウみたいに明らかにモテる男とつきあうのは色々と不安があるし、それにやっぱりエッチの半分近くがお風呂でというのはちょっと普通じゃないと思う。 でも。 「それって、もったいないよね……」 ちょっと不安にはなるけれど、それでもリョウがちゃんと自分のことを好きでいてくれるのだから、不安を理由に分かれてしまうのはもったいないと思う。 それにお風呂でのエッチも確かに変だとは思うし、浴室は明るいから恥ずかしいけれど、その分すごく気持ちいいし、リョウも喜んでくれるのだから別にいいと思う。 「……ナオトはそう思ってくれるの?」 リョウの言葉にナオトがうなずくと、リョウはまた髪を洗うのをやめて抱きついてきた。 「あー、やばい。  すっごいかわいい。  かわいすぎて今すぐしたいけど、さすがに今日は無理だよね?」 ストレート過ぎるリョウの問いかけにナオトは真っ赤になる。 「えっと……、入れないでいてくれるんだったら、ちょっとならいいけど……」 仕方なくいう感じでそう答えたけれども、本当はもう、ナオトの方からねだりたいくらいの気分になっている。 「いいの?  ……じゃ、頭はこれくらいにして、体の方、洗おうか」 明らかにスイッチが入ったと分かる艶っぽい声で囁かれ、ナオトはうなずく。 本当に入れないで我慢してくれるのか、あるいは入れられないで我慢できるかどうかは正直微妙だけれど、別にそれでかまわない。 そう思いながら、ナオトはシャンプーを洗い流してもらうために目を閉じた。

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