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「金鬼様はまだ交尾中か」 「そうみたいでしゅ」 「なーに、苛々しちゃって、かわい~」 「黙れ、片翼もぐぞ、中凶」 障子の向こうで三人の側近衆がひそひそ話を交わしていた。 怒涛の種付け攻めは終わりを迎え、身の内からずるぅぅりイチモツが引き抜かれて虚脱寸前でありながらも。 壱はそのひそひそ話をかろうじて耳にしていた。 ……かな……おに……様? その名は知っている……お父様から……しつこいくらいに何度も聞かされた。 …………まさか、そんな…………。 「てめぇの交尾で気を失わないとは、お前さん、よっぽどの好き者だな、おのこはらみ?」 布団に倒れ臥していた壱は恐る恐る肩越しに視線を向けた。 自分の背後に片肘を突いて悠々と寝そべっていたのは一人の男だった。 「お前さんみてぇに綺麗なニンゲンを見るのは二度目だ」 長い髪は光り輝く月と同じ色、鋭い眼はやたら黒々としていた。 屈強な肉体にタトゥーのように走る漆黒の縞模様。 笑う口元からは牙じみた八重歯が。 「まさか……物の怪の長……月喰い金鬼?」 その昔、月をも喰らうと恐れられた金色の鬼。 小彼岸家が絶対の敵とする物の怪。 「オヒガンのおのこはらみ、まだまだ味合わせてもらうぞ」 物の怪は人型に変化することができた。 人型で人間世界を堪能する物の怪も珍しくはなかった。 「はぁ……ぁ……んん……っ」 金鬼は壱を軽々と抱き上げて仁王立ちとなり、白濁汁で滑る尻を鷲掴みにし、空中で交わりに耽っていた。 人型のイチモツでとろみある雄膣をがつがつ穿つ。 獣型でいたときよりも上回る快楽。 絶妙な強弱の力加減をつけたり、爪を引っ込ませた五指で尻たぶを揉み立てたり。 果実の如く瑞々しい唇を吸うことができる。 「んぅ……っぁふ……」 この体位では金鬼にしがみつくしか術がなく、壱は、逞しく這った肩に両腕を回していた。 凶器イチモツで雄膣を満遍なく隅々まで擦り上げられる。 唇や舌に障る八重歯の尖りにぞくぞくする。 厚い胸板に勃起した乳首が擦れて、そんな些細な摩擦にまで敏感に感じ取ってしまう。 ああ……だめ……。 このまま続けたら、私、きっと…………。 「俺様の子を孕んでみろ、おのこはらみ」 「あ……いや……おねが、ぃ……やめて……」 「物の怪とニンゲンの合いの子、面白そうだろ?」 金鬼は壱の背中を柱の一本に押しつけた。 そうして支えを増やすと引き締まった腰を脅威の速度で振り仰ぎ始めた。 「あぁぁぁあ……! ら、めぇ……はらんじゃぅ……いや……っお父様ぁ…………!!」 父を呼ぶ壱に金鬼は鋭く笑った。 両頬にもシンメトリーに刻まれている縞模様が歪んだ。 「父を呼ぶ子を犯すのも一興だ」 傲慢な囁きと共に、人型となって初めて、淫穴に活きのいい子種を迸らせた。 どくん…………!!!!!!! 「んはぁぁぁ…………」 肢体を痙攣させて壱もまたつられて射精した。 びゅくびゅくと雄膣の向こうへ行き渡る子種の波に、唇から一筋の唾液を、霞む双眸から一筋の涙を零す。 金鬼はさもうまそうに壱のそれを舐め取った。 「誰よりも愛してやろうか、美しきおのこはらみ?」 戯れの一言を聞く前に、壱は、やっと意識を手放すことができた……。 誰よりも愛してやる? ご冗談もほどほどに、長? そもそもこんな予定じゃなかった。 てっきり殺すかと思いきや、まさか、子を孕ませようとするなんて。 そんなにあの男が忘れられないのですか? 「おーい、大凶ぉ?」 「どうしたでしゅか?」 首を傾げる弟達に無視を決め込み、黒装束の大凶(だいきょう)は布当ての下でその赤い唇をぎりっと噛み締めるのだった。

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