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壱が戻ってきた。 意識は混濁していたが衰弱はしておらず、怪我もなく、小彼岸家の者たちは胸を撫で下ろした。 当主の宮比、その息子二人が留守の間に大事な「おのこはらみ」は連れ去られていたのだ。 しかし安堵したのも束の間。 壱の体には交わった痕跡があった。 「親父……」 「父さん」 息子二人の張り詰めた呼びかけに宮比はうろたえることなく凛とした涼しげな声で返事をする。 「報復といこうか、二朗、三吾?」 「あっあっやめろぉっっこの鬼畜が……!!」 小彼岸家座敷牢にて。 捕えられた物の怪が耐え難き恥辱に顔を真っ赤にして喚き立てていた。 小結界で力を封じられて、両手首はもちろん、足をM字開脚した状態で乱れた黒装束ごと緊縛されている。 いわゆる亀甲縛りというやつで体の自由がまるで利かない。 物の怪の長、月喰い金鬼の側近衆、烏天狗の大凶は人型の姿でぎりぎりぎりぎり歯を食い縛る。 長い漆黒の前髪で片目を隠し、もう片方の吊り目で、ぎっと相手を睨みつける。 「なっんでぇ……っおのこはらみを戻しにきたオレをこんな目に……あっ、ぁん……!」 大凶はただ亀甲縛りされて喘いでいるわけではない。 「褐色の肌にも赤い縄は意外と映えるものだね」 真正面にすっと立つ宮比は眼鏡越しに微笑する。 「その蛇達もね」 大凶の尻穴には二匹の蛇が潜り込んでいた。 硬い鱗に覆われた白蛇は外気に出た半身を頻りに蠢かせている。 もっと、奥へ、進もうと。 「ひぃゃぁぁ……も……っ入るかよ…………!!」 蛇は宮比の使い魔だった。 物の怪に対抗するため小彼岸家当主は代々人外の力を借りている。 蛇神と契約を交わし、その身の内に蛇を飼い続けている。 ずっずっずっずっ 二匹同時に奥へ進もうとし、俄かに強くなる蠢きに、華奢な人型大凶は堪らず仰け反った。 嫌なのに何故だろう。 体が熱い。 ぞくぞくする。 「クソ、ど……してぇ、こんなぁ……」 不思議なことじゃない、蛇は淫毒持ちだったから。 宮比は教えてやるつもりなど微塵もなかったが。 「ご覧、可愛いと思わないかい」 宮比の白い掌には小さな小さな白蛇が乗っかっていた。 ビーズのような赤い目でリボンのような赤い舌をしゅるしゅる出している。 「これでも立派な成体でね。とても狭い場所に身を潜らせることを得意としている」 こういう場所にね。 宮比がおもむろに手を掲げれば、長い指を伝い、小蛇は。 淫汁を小刻みに弾き続ける大凶の勃起男根にくるりと巻きついたかと思うと。 こぷこぷ我慢汁の湧く尿道口へ……。 「んひぃぃぃ…………!!」 か細い小蛇はあっという間に大凶の男根尿道へずぷずぷ入り込んでしまった。 尻尾の先っちょがかろうじて飛び出ている。 「やっやだっいやぁぁぁぁーーー!!」  狂いそうな蛇攻めに大凶は少女めいた悲鳴を上げた。 淫毒が体中に回り、肌を苛む荒縄はぎしぎし軋み、男根がびきびき怒張する。 抑えようのない熱で息は掠れ、吊り目はうるうる潤み、乳首は完全勃起して。 だが射精できない。 尿道に入り込んだ小蛇が邪魔をしている。 「やらぁぁぁーー……! やらやらやらやらぁぁッッ!!」 自由の利かない体を畳の上で大凶は悶絶させる。 宮比は涼しげな微笑をまるで崩さずに、悠然と、身悶える物の怪を見下ろしている。 その腕には新たな蛇が巻きついていた。 宮比は何の躊躇もなくその蛇を大凶に放つ。 蛇はすでに二匹を呑み込んでいっぱいいっぱいの尻穴に、無理矢理、頭部をめり込ませると。 続けて胴体をぐぐぐぐぐっと、二匹の間を練って潜らせていった。 みちみちみちぃぃッッッ 「自分の悲鳴で聞こえないかもしれないが」 先刻から君の弟達が同様の悲鳴を上げているのは届いているかい。 「どうかな、大凶?」 微笑交じりの宮比の問いかけに大凶は吊り目を限界まで見開かせた。

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