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多勢に無勢、死に瀕するかもしれない窮地に陥った宮比を救ったのは。 「てめぇら、それでも月喰いに与する物の怪か」 赤い地にあでやかな柄踊る上衣を肩に羽織り、月色の髪を粋な風に靡かせ、夜の闇と同じ黒々とした鋭い双眸を持つ。 物の怪の長だった。 生き別れし双子。 やっと見つけた片割れは振り向いてくれない想い人、いや、それ以上に心揺さぶる、かけがえのない宝物となった。 しかし相手は古より争い続けている仇敵の懐の中。 修羅丸と朱色は一つの決断を二人で共に下す。 「これからはずっと一緒だ、朱色」 「ぅん、修羅丸」 手に手を取り合った双子は、 華麗なまでに行方を眩ましてしまった。 「修羅丸が駆け落ちぃ? 相手は誰だよ?」 「それがね、二朗兄さん、相手は物の怪に攫われた小彼岸の子だって」 「つまり、だ。兄貴が生んだ世継ぎどっちもとんずらしたってわけか」 つまりは振り出しに戻ったようなものだ。 おのこはらみが産み落とした、より強い力を持つ稀代のお世継ぎは失われて、決定打もないままに物の怪と小彼岸一族の膠着状態はこれからも続いていく。 永い戦いを予感した二朗と三吾はため息をついた。 座布団に行儀よく正座してお茶を飲んでいた、当の双子の母親である壱は、げんなりしている弟達に微笑みかけた。 かつて家族に過保護に扱われ、薄幸そうな儚げな雰囲気を漂わせていた彼は、双子を産み落としてからというもの随分と印象が変わった。 男にして母となった者の唯一無二の強さとでも言うのだろうか。 「あの二人が好きな道を歩んでくれたこと、私はとても誇りに思うよ」 壱は我が子らと同様、一つの決意を胸に抱いていた。 「お父様、私に当主の座を譲ってくださいませんか」

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