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増税前日談オマケ-1
九月最後の週末、ディスカウントショップで買い物を終えた野宮と久世はマンションへ一端帰宅した。
「重た、久々にこんっな大量買いした」
「やっぱり十パーセントに変わるのは大きいからね」
増税前に生活用品やお酒を買い溜めした二人。
それぞれの部屋に荷物を置いてくると、予約していた近所の居酒屋へ飲みに出かけた。
「外食はしばらく禁止、十月からは前にもまして節約しなきゃかなぁ、なんかめんどくさい。これジュッパーだっけ、それともハチパーだっけ、いろいろ考えるのめんどくさい」
もみじおろし添え炙りサーモンをぱくぱく食べながら末っ子・野宮は愚痴る。
「クレカ払いはいいんだけど、コンビニでってなると、抵抗あるんだよね。大体少額だし。でも還元率のこと考えると断然キャッシュレスがいいんだよね」
薬味がたっぷりのった揚げ出し豆腐を野宮の取り皿に分けてやりながら肩を竦める長男・久世。
「俺、小銭出すのめんどいからコンビニでもクレカ使うよ? 最近はペイ中心だけど」
「そうなんだ。じゃあ支障ないね。はい、どうぞ、野宮さん」
「はい、ありがと、久世サン」
ちょいぶきっちょな野宮のお世話をするのが大好きな久世は「あづいッ」と熱々の揚げ出し豆腐で舌を火傷しそうになっている恋人に微笑んだ。
「鉄なべ餃子と小龍包も頼もうか」
熱々メニューで熱がる野宮が見たいらしい、さすがS寄り男なのである。
「なんか買い忘れなかったかなー、ティッシュだろー、トイレットペーパーだろー、シャンプーにボディソープにハンドソープだろー、あッ、やば、食器用の洗剤買うの忘れた」
「じゃあ後で買って帰ろう」
「あぢぢッ、このチーズタッカルビぜんっぜん冷めないよ、久世サぁン」
舌まで出してヒィヒィしている野宮に微笑みが止まらない久世なのであった。
「今日は俺の部屋に行こう?」
夜十時過ぎ、程よく酔っ払ってマンション三階の久世宅に帰宅したアラサーカップル二人。
「へー、これ新商品? 塩レモン味! 俺買ってないや、開けてみてい? お、これも買ってない! 飲みたい!」
ダイニングテーブルに置きっぱなしにしていたエコバッグの中を嬉々として物色している野宮に久世は苦笑した。
「十月が来る前に全部飲まれちゃいそう」
増税前に美容室で髪も染め直した茶髪の野宮を、黒髪の久世は後ろから抱きしめた。
「あんまり飲み過ぎたら勃たなくなっちゃうよ、紘 ……?」
ここぞというときの久世の名前呼びに野宮の鼓膜はふやけそうになる。
「た、勃つもん……知ってるくせに、り、凛一 ……」
未だに呼び捨てするのに慣れずに、紅潮していた頬をさらに赤くさせた野宮に久世は口元を綻ばせた。
「俺ね、増税前にどうしても買っておきたいものがあったんだ」
「へ……? な、なに? 家電とか?」
「もっと大事なもの」
「家電より大事な……?」
腕の中で照れながらキョトンする野宮に久世は恥ずかしがるでもなく平然と告げた。
「えっちなオモチャ」
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