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話してみれば判明した多くの共通点。
「野宮さん、二十七歳か。じゃあ俺より一つ年下だ」
「あ、でも俺一月生まれなんで。学年は一緒じゃ?」
同年代どころか同学年、ハマっていた音楽も同じときていた。
「ライブにも行ったよ、俺」
「ライブには行ってないけど。Mステに出たのは見た」
「あれは痺れたッ」
「確かに。痺れたよね」
兄と姉がいる末っ子野宮。
妹が二人いる長男久世。
「次、ハイボールを」
「あっ、俺もハイボールで」
空いたジョッキが下げられる際に久世が注文すると野宮もすかさずドリンクオーダー、そしてまた揃って照れ笑い。
「先月、異動でコッチに来たばかりで。どこか気軽に飲める美味しい店探してたら、ここを見つけて」
テーブルに出来上がっていたジョッキ跡の小さな水溜りをおしぼりで拭く久世、正確に言うならば総務部人事課リーマンだった。
「あー道理で見たことない顔だと思った。俺、めちゃくちゃ入り浸ってるんで、ココ」
小皿に乗っけた箸をちょいちょい落とす野宮は総務部総務課、生粋の総務リーマンだった。
「酢の物系は苦手」
「あー俺も。酸っぱい系、だめ。あとポテサラはいけるけどサラスパむりっ」
「それわかる」
話し込んでいたらあっという間に一時間半過ぎた。
「久世サン、締めはラーメン派とか?」
「ううん。ラーメンは油っこいから。やっぱり米かな、おにぎりとか」
「うっわ。マジか。俺もそう」
「気が合うね」
「ほんと。この近くにおにぎり専門店、あんだけど。行ってみる?」
「へぇ。行ってみたい」
そんなわけで初対面同士でありながら二次会まで共にした二人。
「やっぱ赤だしに限る?」
「限るね」
「だよなー」
味噌汁の好みまで一緒であることがわかって始終意気投合、こんなに共通点で溢れている人間と出会ったのは初めてレベルであり、何ともホクホクした夜を過ごして、さぁお別れになるかと思いきや。
「うそだろ、まじで?」
「俺のウチ、この三階」
「俺、二階……ちょ、やば、鳥肌立った」
「俺も」
野宮と久世は住んでいるマンションまで同じだった。
もはや照れ笑いも出ずに急に他人行儀に真面目な会釈だけで済ませ、ぎこちない足取りで違うフロアに帰宅した。
「なんかすげー、これが俗に言う運命?」
「こんなこともあるんだな」
部屋で一人きりになって明かりを点ける前にそれぞれぽつりと本音を洩らした。
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