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「あ。野宮さん」 「お。先週振り、お疲れサマー、久世サン」 次の週末、野宮と久世は焼き鳥屋で再会した。 「同じマンションなのにぜんっぜん会わない」 「共通点はたくさんあるけど。出勤・退社時間はかなりズレあるみたいだね」 「だなー」 一杯目の生を片手に素知らぬ顔で会話を交わす二人だが。 久世サン、ちょっとマトモに顔見れないわ……。 一週間ずっとお世話になりました、野宮さん……。 互いにタイプど真ん中であり、前回よりもそわそわ、外面は繕いつつも心はなかなか落ち着かない。 もしかすると、ひょっとして、同類なんじゃないだろうか。 男子校出身だし、自分と同じで、目覚めちゃったりしてるんじゃないだろうか。 「彼女? いない、まーまー忙しーし」 「タイプ? うん……性格が合えば特に別に」 無視できない淡い期待にそそのかされて、それとなく探りを入れてみたり。 何か決定打はないかと内心考え悩んだり。 「お、もうカキ出てる、ソテーかフライか」 「バターソテーとか、そそる」 「お、そそる、ソテーにする」 いつの間にか探り合いを放棄して心地いい空間で飲み食いを堪能していた。 変に意識するのも面倒くさくなって前回と同じ風にどうでもいいような共通点探しを開始する。 「さしすせそよりブラックペッパー」 「ヘッドホンって肩凝るから結局イヤホンに戻る」 まぁ、出会ったばかりだし同じマンションだし、焦る必要もないかと考えを改めた二十代後半男子。 繁盛する焼き鳥屋カウンターで一時間半食事を楽しんで、何となく最後のオーダーという心づもりで頼んだ軟骨つくねを氷で薄まったハイボールで流し込んだ。 「ぷはっ……締め、おにぎり、行く?」 「うん。いいね」 「俺んちでもいいですけど」 「野宮さんち?」 「あーうん。久世サンがよければ」 「ウチの下だし。こっちこそ迷惑じゃないなら」 「「………………」」

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