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優しい傷

玄関を開け部屋に入ると、志麻はソファに腰をかけ、隣をポンポンと叩く。僕は誘導された場所へと座った。 「で、仲良く待ち合わせってか?」  悪意たらたらで、僕を睨みつけていることが見てはいないがよく分かる。 「違う。あれはたまたま打ち合わせに来てたみたいで…」 「打ち合わせねぇ。まあいいや。で、何をされた」  ソファの背もたれに右手を当て、体ごとしっかりと僕を睨みつけている。 「キス…、ディープな…」 「そんだけか?、こんな事とか、こんな事はされてないな?」  僕の体をしなやかに触り、ズボン越しに触る。 「されて、んっないっ」 「…信じていいんだな」  手を止め、僕の赤くなった顔をしっかりとした目で見つめた。 「信じて」 「…心配したんだぞっ。真央君から電話が来てよ、出たら陸が大変だから早く来いって言うからさ~。陸が殺されかけてんじゃねぇかって、焦ってたんだからな~」  安心したのか、僕にその大きな胸で腕で手で抱きしめてきた。 「ごめんね。僕が甘かったよ…」 「本当にな、誰も寄り付かねぇよに、見えるとこにも付けとかねぇとな」 「んっ」  僕の首筋に噛み付いた。何度も。そして、身体中にも。 「んっ、そこは誰も見ないんじゃないの」  内太ももに噛み付く志麻に言う。 「俺の自己満」  ニヤリと笑う。嬉しいと思う僕は変なのだろうか。  身体中に跡をつけた志麻は、僕の唇に軽くキスをし、僕から下りた。 「えっ、止めちゃうの?」 「甘かった罰」  ニヤリと笑う志麻は、小悪魔のような顔をしていた。 「これじゃ生殺しだよ…」  小さく呟いた言葉は、志麻には聞こえていなかったようだ。

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