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利き手の傷
「ただいま」
「…おかえり」
リビングから急いで玄関へと志麻がやってきた。
「…どうだった?」
「お客さんも皆もめっちゃ優しくて、志麻の言う通り心配入らなかった感じ」
「よかった〜、陸の人柄からしてねぇとは思ってたけどよ、なんか不安になっちまってよ」
そう言い、左腕の服をまくるとそこには大きな絆創膏が貼られてあった。ガーゼ部分は少し赤くなっていた。
「どうしたの!?」
両手に抱えていたお客さんから頂いたプレゼントを床に置き、志麻に近寄る。
「陸のこと考えてたら、落ちてきた角材に気づかなくて、グサッと」
「ご、ごめん。僕のせいで…」
とうとうゲガまでさせてしまった。
「ほんと、陸のせい」
志麻の言っていることは正しいことだが、実際に言われてみると辛くなった。
「だからさ、責任とって」
軽く壁ドンをされた。ドンというほど強くはないので壁トン。
「分かった…」
志麻の首に腕を回し、ディープなキスをした。
「んっんっ、ふぁ」
「んっ、んんっ、ふぁぁ。…ベッド行くか?」
「…うん」
志麻は左手があまり動かせないため、ぎこちなそうになっていたが、必死なって僕を楽にしてくれていることがいじらしくて、とても可愛かった。
朝になると、隣には小さくいびきをかいて寝ている志麻の姿が。その表情は見るからに安心し切っている顔をしていた。僕は少し空いている口にソッとキスをして、ベッドを出た。
現在は午前六時前。今日志麻は大学もバイトを奇跡的に休みである。大学は創立記念日、バイトは昨日仕事が終わり、次の仕事待ちだそうだ。なので「陸も休んで、明日はイチャイチャしまくろうぜ〜」と、僕を揺さぶる。出来ることならそうしたい。でも、最近は様々なことがあって授業があまり聞けておらず、結構ピンチなのである。
普段は七時四十分くらいに家を出るので、まだ余裕がある。軽く朝食を作り、昨日の深夜放送のアニメを見ながらスマホニュースを確認し、昼食を食べていた。
「朝飯は一緒に食おうっていう約束じゃんか」
寝癖がいつも以上に爆発しており、開ききっていない目の志麻が僕を見つめる。
「ごめん。今日はずっと寝てるもんだと思ったからさ。起こすのもなんだと思って。あっ、おはよう」
「あっそ。おはよ」
少し拗ねたように言い、椅子に座り物欲しそうに僕の朝食を見つめる。
「自分で用意してよねっ。あとはお皿によそうだけなんだからさ。いつまでも、子供じゃなくてさ。たまには自分で」
「ほぉーい」
口をへの字にしてから、渋々キッチンへと向かった。
「ほんじゃ、行ってきます」
「おう、行ってらっしゃい」
玄関を出て、いつも通りに階段を降りて駅へと向かう。
志麻は寝起きがいつも悪い。付き合いたての時は寝起きが良かったのだが。志麻曰く、「親しい奴の前ではありのままの俺でいたいんだよ」とのこと。もう慣れたことだが、始めの時は少し心が痛かった。話し掛けても軽い返ししか返ってこなく、嫌いになったのかななんても考えたものだ。そのことを志麻に伝えると先ほどのことを言われ、その後しっかりと抱かれました。
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