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第4話
店を出たのは、閉店間際の0時頃。
街はまだまだ賑やかだったけど、店の煩さに比べればかなり静かな方だった。
大して強くもないのにビールや日本酒を飲みまくったコイツを置いて行くわけにも行かず、フラつく足取りを持ち直させながら歩く。
「大丈夫、まじ大丈夫だから兄さん、ね」
と言う時点でろれつが回っていない。
しまいに思いっきり道に倒れそうになったから、仕方なく無理矢理片腕を肩に乗せ抱えて歩く。
俺よりも20cmくらい背が高いから、抱えるだけで結構重たい。
「ったく、加減して飲めよバカ。で、どこって言えばいい?」
こいつの家も知らない。とりあえずタクシーを捕まえようと車道を見た。
「うん、大丈夫、今日帰らないからぁ」
ヘラヘラしながら何か言ってる。
「お前が帰らなくても俺が帰りてぇんだよ」
「じゃあ兄さんチ、兄さんチ行くぅ」
「ふざけんな、連れてくわけねーだろ」
体がだんだん重くなってくる。
俺だって酒飲んでるからマックスの体力はない。街のど真ん中なのに、雪山で荷物を背負って遭難しかけてる気分に等しい。
こういう時に限って、タクシーも捕まらない。
(この野郎…)
本当に道の隅っこに置いて帰ってやろうかと思ったけど、俺の中の僅かな良心がそれを阻む。
潰されそうになりながら歩く道すがら、目に入った細い裏道に、救世主の姿を見た。
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