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第5話
ぶん投げるようにベッドに横にする。
本当に重かった。腰にきた。普段力仕事なんかしないから、腰だけじゃなく全身に響いてきてる。筋肉痛になりそうだ。
「ああ~んもぉ~」
そのままゴロゴロしているのを見ると無性にイラッとしたが、もう俺はこのまま帰るからどうでもいい。
今度会ったらたっぷり酒を奢らせてやる。
細い裏道の奥にいた救世主の正体は、ラブホテルの看板。
一番安い部屋を見つけ、連れ込んで寝かせてやる。
セミダブルのベッドとバネの強そうなソファ、ボロボロの壁紙、シミだらけのカーペット。薄型テレビが新しすぎて浮いてる。年季入りすぎててヤバいけど、道端に寝かされるよりいいだろ。
……そういえば、男とホテル来るの2回目だな。あん時のホテルと比べたら月とスッポンだけど。
なんてどうでもいいことも思った。
「じゃーな、このクソ野郎」
中指を立てて嫌味ったらしく言って、部屋を去る。入室から5分経つと自動的にロックされるとか書いてたから、さっさと出るに限る。
自分の手持品を確認する。財布とスマホ。OK。
部屋のドアノブに手をかける。
その瞬間に、ベッドから布団を跳ね上げるような音がした。
ぎょっとして振り返る。
上半身を起こしていた。
棺桶から蘇るゾンビを思わせて、一瞬背筋がゾッとした。
「待ってぇ~兄さん待ってぇ~」
声を聞いたらゾッとするどころか拍子抜けした。
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