9 / 28
第9話
「はい?」
思いっきり首を横にひねった。寝違えたのかってくらいひねった。
「……あれ、違う? 兄さん俺の童貞もらって?」
「いやいや、そうじゃねぇよ!言い方の問題じゃねぇ!」
言い間違いならまだ笑ってやるけど、言い直したところを見ると芯はブレてないようだ。
「童貞もらってって……なんだそれ」
処女ならまだしも童貞って!いや、まだしもじゃねぇや。俺も混乱してる。
バーで見せたみたいにケロッとした顔をして、同じように首をかしげてきた。
「いや、さすがに処女はあげられないけどぉ、童貞なら卒業させてもらえるかなぁって」
「意味ワカンねぇよ!何それ、俺に誰か紹介しろっての?」
それなら納得いくけど、それじゃなきゃ納得いかないけど。
とはいえ紹介できる相手もいないし。
「それならこれで探せばいいじゃねぇか、ほら」
ベッドの傍にあった風俗雑誌を投げつける。勝手にデリヘルでも呼べばいい。
そこまでお膳立てしてやってんのに、このバカは首を横に振りやがった。
「えーっ、やだぁ、だって童貞バレるじゃん!」
「はっ? いいじゃねぇかよ向こうはプロなんだから気にしなくて」
「無理無理無理無理!童貞ってバレるのがやだ!どんな女の子にもバレるやだぁ!」
「じゃあどうやって童貞卒業するつもりなんだよ!」
一生勝手に拗らせてろ。
舌打ちして不快感を表すと、奴はいきなり立ち上がって、そのままベッドに強引に俺を押し倒してきた。
「だから、相手して?」
ベソかきそうな顔しながら、見下ろしてくる。ガッチリ目が合った。
ともだちにシェアしよう!